天牛(紙切り虫)

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カテゴリ: 知的財産関係

智財化戦争と軍民一体の中国産業界

JBpress 日本戦略研究フォーラム政策提言委員、株式会社アシスト代表取締役)

2020.8.28

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中国特有の産業構造

 中国と一定の距離を置くことが必要な理由を理解するには、中国の産業政策や産業構造を知る事が必要だ。帝国データバンクによると、20201月時点で中国に進出する企業数は、13646社とされる。しかし、これら日本企業の内、中国独自の産業政策や産業構造を知るものはわずかだ。

 中国は、軍事拡大と経済成長が一体化した国だ。中国の産業構造の特徴とは、人民解放軍と政府、いくつかの軍事企業コンツェルンが、政治・経済・軍事の連合体を形成している点である。米国防総省が、今年(2020年)624日付の議員宛て書簡で、人民解放軍管理下にある企業にファーウェイなど20社を指定した。当該リストの中に、この軍事企業コンツェルンが含まれている(表参照)。

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表:「米国で活動している中国の軍事企業」
出典:米国防総省が、今年624日付に議員宛て書簡で明示した「中国軍と関係の深い企業」各種資料を基に筆者作成


 これら軍事企業コンツェルンは、人民解放軍の兵器や武器装備品の研究開発・製造で中心的な役割を果たしている。そして、各軍事企業コンツェルンの傘下には、開発された軍事技術を民生部門へ転換するための企業が存在する。また、2005年以降は、民生部門企業の軍事産業への参入が解禁された事から、民生技術を軍事技術に応用する企業もある。

一見、民生品だけを扱うように見える中国企業の親会社が軍事産業企業の場合がある。民生品を扱う子会社を通じ、親会社へ軍民両用技術が筒抜けになる事がある。その結果、自社が、いつの間にか中国の軍民融合戦略に取り込まれてしまうリスクがあるのだ。

 中国の産業政策である「軍民融合政策」とは、軍事技術の開発は民間利用を念頭に置いて行われる。軍事技術が開発された後、この軍事技術を転化した民生品を商品化して販売する事で経済成長を計るものだ。

 メディアは、この一番重要な点を議論せず、日本企業は、中国の軍民融合政策に目をつぶり、中国での事業展開を行っている。

 日本は、外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」)に基づく輸出貿易管理令と外国為替令で、軍民両用技術や軍民両用製品の移転を規制している。このため、日本の企業や大学、研究機関等には、中国による軍事転用を防ぐために技術管理の徹底が求められている。特に、昨年の大規模な外為法改正は、同法を2018年に成立した米国の2019年度国防権限法に含まれる「外国投資リスク審査近代化法(以下、FIRRMA)」に近付け、軍民両用技術の海外移転を厳格化した。

 特に、外資規制の対象となった産業に属する企業は、細心の注意が必要だ。ところが、日本の中小企業には、その改正内容が十分に周知されていないのが現状だ。日本企業が中国の民間企業との間で軍民両用技術を伴う取引を行う場合、以下2つのリスクがあることは明らかだ。

1)日本企業が、中国企業と取引や合弁会社設立、技術提携等をする際、中国側企業が日本の技術や日本から輸入した製品を兵器に転用するリスク。

2)中国が安全保障上の懸念がある第三国に軍民両用製品を転売したり、軍民両用技術を移転したりするリスク。

「外為法を知りませんでした」は通用しない。輸出管理機能が不十分な中小企業が中国との取引をする場合、輸出管理の専門機関や外部専門家に相談することが肝要だ。

軍民両用技術の移転理由

 パソコン、スマートフォン等を使う情報処理や通信技術の総称である情報通信技術が目覚ましい発展を遂げた。軍事でも、情報通信システムが各装備と指揮命令系統をつなぐ中心的役割を担う。中国はこれに着目し、2017年頃から「智能化戦争(intelligent warfare)」を言い始めた。中国の国防白書には、中国が西側先進国から移転する軍民両用技術の使用目的が記載されている。

「新しい科学技術革命と産業革命が進む中、人工知能、量子情報、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、IoTInternet of Things)等、最先端の科学技術の軍事領域への応用が加速し、国際軍事競争の局面に歴史的な変化が発生している」

「国家の海洋権益を維持し保護し、国家の宇宙、電磁波、サイバー空間等における安全を維持し保護し、国家の海外における利益を維持し保護し、国家の持続可能な発展を支える」

 また、AI(人工知能)発展計画には、「AI技術を軍民双方への転化を促進し、新たな世代のAI技術を指揮命令、軍事シミュレーション、国防装備等に対する有力な支柱へと強化し、国防領域のAI技術の成果を民生領域へ転化・応用を誘導する」と記載されている。

 中国は、米国から覇権を奪うのに、戦争における制海権や制空権に加えて「制智権」が重要となると考えた。制智権を強化するため、様々な手段を駆使して、西側先進国から軍民両用技術を移転して軍事転用し兵器の近代化に利用している。国家の総合的な科学技術力が智能化戦争の勝敗を決めるからだ。その目的は、IoTに基づき知能化した武器装備を利用し、陸、海、空、宇宙、電磁波、サイバー及び認知領域で一体化戦争に対応した軍事装備品への転換を進めるためだ。

 軍民両用技術や軍民両用製品は、核兵器、生物兵器、ミサイル、自動小銃、戦車、戦闘機等ほとんどの武器や兵器に転用されている。中国は、人民解放軍の主力である15式軽戦車、O052D型駆逐艦、第5世代ジェット戦闘機J20戦闘機、中距離弾道ミサイルDF26等を今後、智能化兵器の代表例として発展させていくであろう。

 そのために中国政府は、先の全国人民代表大会でも2020年の国防費を前年比6.6%増の12680億元(約191799億円)とし、経済停滞の中でも軍備拡張路線を堅持する姿勢を明確にした。

中国製造2025と中国市場

 2015年、中国は軍民融合と智能化戦争への準備が組み入れられた産業政策「中国製造2025」を公表し、2049年までに、米国に替わり世界一の製造強国となることを明らかにした。その「重点領域技術ロードマップ」にはこうある。

2025年までに先進的な智能分野における核心的な情報機器に係る産業構造と技術イノベーションシステムを確立し、中国産の智能分野の核心的な情報機器が国内市場の60%以上を満たす供給能力を獲得すること」

 対象分野は、(1)次世代情報通信技術(半導体を含む) (2)先端デジタル制御工作機械とロボット (3)航空・宇宙設備 (4)海洋建設機械・ハイテク船舶 (5)先進軌道交通設備 (6)省エネ・新エネルギー自動車 (7)電力設備 (8)農薬用機械設備 (9)新材料 (10)バイオ医薬・高性能医療器械だ。いずれも智能化戦争で米国に勝つために必要な産業である。

 ところが、日本企業は、「中国は人口が多い」「需要が多い」という幻想からなかなか解き放たれない。尖閣諸島を国有化したとき、中国にある日本企業の工場や商業施設で起きたことを思い出すべきだ。中国市場は、製品の品質や価格と無関係の要素で市場占有率が決まる市場だ。中国市場は政府に統制され閉鎖的であり、欧米の市場と同じではない。米中対立が激しくなり、日本が米国側に立つことを鮮明にすれば、中国共産党の意思で、日本企業の市場シェアは劇的に低下するだろう。人口は多いが、政治体制が独裁の国で、欧米市場と同じような企業間競争ができるという前提に無理がないか。

 中国は「中国製造2025」で、2049年までに、世界最強の製造強国となる目標を明言している。中国が世界一の製造強国になれば、中国にとり日本企業は必要がなくなる。日本企業が中国に技術移転を進め、中国にとり必要な技術が移転された後、日本企業が使い捨てになる可能性があることを企業経営陣、経済評論家の多くが無視、または軽視している。

 日本企業は製造拠点の国内回帰にも消極的だ。中国の部品メーカーから、安くて色々な部品が調達できるようになっているので、中国製部品の比率を下げようと思っても、直ぐにはできないと考えている。しかし、中国政府の命令で、中国の部品会社が部品を供給しない場合、サプライチェーンは維持、対応できるのだろうか。

 中国の産業構造、軍民両用技術移転の理由、産業政策について述べてきた。加えて、親中企業が米国から強烈な制裁を受ける可能性があること等を考えれば、日本企業が存続するためには、虎の子の技術開示を止め、競争優位を確保すること。国家安全保障の観点から、軍民両用技術の移転を阻止すること。グローバルサプライチェーンの見直しを行い、中国依存を希薄化することが必要だ

 ところが、各民間企業に脱中国を促しても、各企業内に様々な社内事情があり、自ら脱中国に向けての行動を起こしにくいのも現実だ。そこで、脱中国を進めるために、政府が強力なリーダーシップを発揮することが期待される。次の国会で、経済安全保障が議論され、政府が音頭をとって、日本企業、特に外為法で規制業種に指定されている産業分野の日本企業へ、国策としての脱中国を働きかけて行くことが必要になる。今年11月には、米国の大統領選挙も行われる。来年は、日本の産業界にとり非常に重要な年になるだろう。

◎本稿は、「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」ウェブサイトに掲載された記事を転載したものです。

筆者プロフィール 平井 宏治(Hirai Koji
 1958(昭和33)年、神奈川県生れ。1982年、キヤノン株式会社入社。UBS証券会社、株式会社レコフ、UFJつばさ証券、PWCアドバイザリー株式会社で勤務後、2016年、株式会社アシスト代表取締役社長。1991年から、一貫してM&A助言ならびに事業再生支援業務を手掛け、成約実績は100件を超える。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。日本の尊厳と国益を護る会、セイコーエプソン、キリンビール、日本生命他などで講演多数。月刊誌「正論」「WILL」や専門誌フジサンケイビジネスアイ他に寄稿の他、ブルームバーグなどでもコメント多数。


日本経済新聞 電子版

2020/8/11

自民党は医療やデジタル分野で日本技術の国際標準化を支援する。台頭する「中国規格」に後れを取り、巻き返しをめざす。次世代通信規格「5G」や遠隔診療などの技術で規格取得の専門家育成や申請費用の助成を検討する。経済安全保障と輸出促進に欠かせないと政府に強く働きかける。

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自民党が支援対象の柱と考える分野は5Gや次の6Gに関する技術で、光海底ケーブルなどがある。人工知能(AI)を用いた無人機なども対象になる見通しだ。

準天頂衛星による全地球測位システム(GPS)で詳細に得られる位置情報を活用したサービスなども想定する。自動運転や災害情報などで国際標準化していけば海外に売り込みやすくなる。

医療は遠隔診療技術に加え、医療機器の標準化を促進する。新型コロナウイルスで感染症対策の重要性が増し、衛生環境を高める日本の上下水道や浄化槽も支援対象に有望視される。

規格を決める国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)などでの申請を見込む。企業などは規格策定、申請、審査の手順を踏む。高度な専門知識が必要で、財政的な負担もある。

自民党の経協インフラ総合戦略調査特別委員会(二階俊博委員長)は7月にまとめた提言で、新型コロナを契機にデジタルや医療技術の需要が高まっていると指摘した。

同党は政府に2021年度予算編成で規格申請に向けた技術コンサルタントの育成や申請などの費用を助成する関連費計上を要望する。政府も反映する方向で調整する。

国際機関に政府職員を派遣するなど、国をあげて支援体制を整備する見通しだ。政府は20年度版のインフラ輸出戦略で、国際標準化の遅れを巻き返すため、官民連携が重要と指摘した。


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国際標準を巡る競争は激しく、米欧にまさる勢いで中国が台頭している。「中国製造2025」で産業育成を加速し、5Gなどの次世代情報技術や高性能の医療機械、電力設備などの標準化と輸出拡大を進める。

中国が広域経済圏構想「一帯一路」で政治や経済の影響力を高め、途上国などでは中国勢の採用に動く国も多い。

日本産業標準調査会のまとめでは、ISOにおける14年以降の委員会設置提案数は中国単独が16件で首位だ。中国を含む複数国提案の2件とあわせれば全体の約4分の1を占めた。委員会は分野ごとの規格をつくる場となる。日本は2件しかなかった。

4月にはISOIECにこれらの先端技術を組み合わせたIT(情報技術)都市「スマートシティー」の国際標準化を提案した。現在審査中で年内にも賛否が決まる。

一方で米国は米企業が華為技術(ファーウェイ)との取引を事実上禁じた。国内通信分野で中国企業排除に向けた新しい指針も発表した。英国やフランスもファーウェイに厳しい態度をとる。

サイバー創研(東京・品川)の調べによると、5G規格に不可欠の特許(標準必須特許)の申請数で日本関係が約3000件なのに対し、中国は約7200件に上る。そのうちファーウェイが3100で世界トップだ。

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米国主導の動きを踏まえ、政府・自民党内には国際標準化での後れを取り戻す好機にしたいとの思惑もある。

同党の新国際秩序創造戦略本部はデジタル分野などでの国際標準化をめざす議論を加速する。

甘利明座長は「新型コロナでデジタルトランスフォーメーション(DX)がいや応なく進展する」と指摘する。中国が国際標準化で有利になれば「システム一式を輸出し、そこから上がってくるデータは全て北京に集まる」と警戒する。

早大の谷本寛治教授は「海外では政府に加え、企業、消費者、労働組合、非政府組織(NGO)の代表が集まってきて国際的な基準を作る取り組みが出てきた。マルチステークホルダーで規格を練っている」と語る。

 

サイバー攻撃 コロナ下の脅威()

日本経済新聞 電子版

2020/7/20

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、企業へのサイバー攻撃が勢いを増している。ネットの闇市場で活動するハッカー集団は在宅で働く社員を標的にし、産業スパイも暗躍する。国の安全保障を揺るがす事態も起き始めた。危機を乗り切るには、従来型の手法をゼロから見直す必要がある。

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「数億円だって惜しくない。見つけたら真っ先に連絡してくれ」。国内在住のハッカーは闇社会に通じるブローカーからメッセージを受け取った。在宅勤務などでのべ3億人が使うビデオ会議ソフト「Zoom(ズーム)」の「ゼロデイ」が欲しいのだという。

ゼロデイとは開発元が発見できていないソフトの弱点のこと。前出のハッカーによると、ズームに関しては闇市場で50万ドル(約5300万円)以上で売買されている。4月、何者かがオンライン会議に割り込んで不正な画像などを表示する「ズーム爆撃」が横行した一つの原因はここにある。

ズームは攻撃を受けてソフトを更新した。「第三者を通じたバグ発見やセキュリティー対策を続けている」(広報担当者)とするが、いたちごっこはなお続いている。

単なるいたずらと考えるのは早計だ。取締役会などを盗聴できれば企業の機密は丸裸。盗んだ情報を転売すれば元が取れる。サイバー攻撃は今や一大ビジネスだ。

「法律事務所から盗んだ企業情報を7月上旬に販売する」――。情報を窃取して身代金を要求する手口である「ランサムウエア」を手掛ける集団は、事務所顧客の日本の電機や自動車大手などの実名を挙げて買い手を募る。別の集団は日本の物流大手が大型買収したある海外企業の「来期予算計画バージョン1」という機密情報を販売する。

デロイトトーマツサイバーは26月、少なくとも10サイトが338件の企業機密を無償公開していたことを突き止めた。「身代金を払わない会社の情報を5%10%と小刻みに公開して、真綿で首を絞めていくパフォーマンスだ」と同社の佐藤功陛氏は話す。

攻撃数は右肩上がりを続けている。情報通信研究機構(NICT)が世界から日本への攻撃関連通信を集計したところ、2019年は17年の2.4倍に増えていた。

対策が甘い中小企業だけでなく、日本を代表する大企業も標的になっている。企業への攻撃が増えているのは、身代金を払う動機があるためだ。

機密情報を暴露されたり、業務停止に追い込まれたりするぐらいなら、金銭で解決した方が安上がりだと考える企業が増えている。ニュージーランドのセキュリティー大手エムシーソフトは、米国だけでもランサム攻撃の被害額は19年に75億ドルに達したと推計する。

攻撃者にとっては、新型コロナウイルスが追い風になっている。

日立製作所NTTなど大手企業が在宅勤務を基本とするなど、従業員の自宅から社内システムにアクセスするケースが増えた。イスラエルのセキュリティー企業、KELAのアサフ・ウォルマン氏は「テレワークを拙速に導入したことでシステムに欠陥を抱える日本企業の情報が、ハッカーの間で大量に流通している」と警鐘を鳴らす。

3密」を避けるために進む工場の遠隔制御もリスクを増幅する。攻撃者は対策の甘い端末から企業ネットワークに入り込み、経営の中枢を担うシステムの乗っ取りを試みる。テレワークの普及は、侵入口が今まで以上に増えることと同義だ。

トレンドマイクロの集計では、6月に発見された新型コロナ関連のマルウエア(悪意あるソフトウエアの総称)が2272件に達し、2月と比べ30倍以上に増えた。

一方で、日本企業の対策は後手に回っている。NRIセキュアテクノロジーズの調査によると、3年程度の中長期のサイバー対策計画を立案する米国企業が7割を超えるのに対し、日本企業は24%にとどまる。人材不足も深刻で「セキュリティー人材が充足している」と回答した日本企業は9%のみだ。

欧州の一般データ保護規則(GDPR)が情報管理を怠った企業に数百億円の制裁金を科すケースもあるなど、規制も厳しさを増す。「買収後に情報流出の事実が判明したら思わぬ紛争に発展する可能性もある」(霞ケ関国際法律事務所の高取芳宏弁護士)

攻撃者は人工知能(AI)を駆使し、時に国家の支援を受けながら企業の弱点を突いてくる。19年の米調査では、情報流出被害に遭った中小企業の10%が廃業を余儀なくされた。サイバー対策を軽視する企業は存続すら危うくなりかねない。

 

200627 種子所条例 30日成立へー中國新聞
                *図・表は、クリックで拡大

<関連記事>  種苗法改正案

4.損失額は220億円! なぜ日本政府は「韓国イチゴ泥棒」を野放しにするのかープレジデント Digital(2020.6.19)

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3.種苗法改正案 農家を守る視点が必要だー中國新聞(2020.5.25)

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2.コロナ禍の中、安倍政権が火事場泥棒的に進めた「種苗法改正」―ハーバー・ビジネス・オンライン(2020.05.23)

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1.柴咲コウ、種苗法改正に憤り コロナの影で日本の「食」が外国資本に売られるーMONEY VOICE(2020.5.7)

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今や韓国産として世界でメジャーに

プレジデント Digital(黒坂 岳央ビジネスジャーナリスト)

2020.6.19

 

コロナ対策優先で種苗法改正は見送り

農水省によると、日本のイチゴ品種を韓国が持ち出し自国で栽培、輸出したため、日本は約220億円を損失したといわれています。そんな中、種苗法改正の今国会での成立が見送られる見通しとなり、大きな話題を呼びました。現在、政府は新型コロナウイルスの対応を優先しています。

そのため種苗法改正により農家への負担を増やす可能性が残ってしまう以上、今国会での法改正は難しいと判断したのだと思われます。また、ある著名人の投稿を機にSNS上で農家の負担増について意識が高まったこととも慎重派を後押ししたようです。

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写真はイメージです

 

著名人の投稿には、「このツイートのせいで種苗法改正が見送られた! 今後も海外に日本品種流出が続く!」と猛烈な批判が浴びせられましたが、私としましては、著名人への個人攻撃は正しくないと思います。政府・与党がこの法改正に慎重さが求められると認識しているのは明らかであり、秋に行われる臨時国会での成立を目指しています。決して改正をやめたわけではないのです。

そもそもいくら著名だとはいえしょせんは門外漢である人物の投稿で改正見送りを決定するとは考えにくいです。仮にそうであるならば、そのような判断を決定した政府・与党の日和見主義的な姿勢こそが真に問われるべきだと考えます。

 

種苗法は青果物における著作権法である

そもそも、種苗法改正とは何でしょうか。簡単に改正できない理由は何があるのでしょうか。種苗法とは青果物における「種」の著作権法に相当します。優れた種の開発者が権利を独占できるようにするためのものです。しかし、従来の法では育成者の権利を完全には守ることができませんでした。実際、日本の農家が取り扱う場合においては、種を栽培し増殖させて翌年の栽培に使用する「自家採種」や株分けで増やす「自家増殖」が可能になっていました。またこれに伴いルートは不明ですが、違法な海外への持ち出しも横行していたのです。

今回の改正で変わるポイントは「保護と規制」です。「保護」については、近隣アジアへの違法な持ち出しを防止する目的があります。近年、日本の優れた果物が現地で栽培され、国際競争におけるイニシアチブを失うという経済的損失が問題視されていました。法改正により、育成者は輸出国や栽培地域を指定できるようになります。違反すれば罰金など刑事罰を課すことが可能になるのです。

そして「規制」という面では、国内の農家も「登録品種」を自家栽培する時に育成者の許諾を求めるようになります。許諾性を導入することで、栽培実態を管理し海外流出の実態把握につなげるという目的があります。しかしながら、反対派の声として「農家の負担増になる」という懸念があります。件の著名人の投稿も「農家の負担を増やしてはならない」と訴えたいという意図があったとみられます。また、技術力と資本力に優れる多国籍アグロバイオ企業が登録品種を増やすことで、日本の農家に種を販売して日本の農家が支配される可能性を心配する声もあがっています。

種苗法改正による農家負担増は限定的

しかし、この規制が直ちに現場の負担増になるとは言い切れません。農作物は「一般品種」と「登録品種」からなっており、今回の法改正の影響があるのは「登録品種」についてです。農業を営む場合に、「一般品種」を栽培するならこの法改正の影響はありません。「一般品種」は従来栽培している農作物や「登録品種」の育成者権が切れたものが含まれます。もちろん、農作物の種類や栽培地によっても「登録品種」の栽培割合は異なるのですが、「登録品種」は全体でみると1割程度で、影響範囲は限定的と見られます。

また、米国のアグロバイオ企業によって、日本の農業が支配される可能性を訴える声もありますが、日本の大豆の自給率は7%であり輸入全体のうち7割を米国に頼っています(平成29年度)。彼らがわざわざ新品種を持ち込み、ビジネスになりそうにない日本農業相手に種を売って稼ぐインセンティブを持つかは疑問が残ります。

いずれにせよ、この法改正には日本の優れた品種が海外流出防止につながる期待と、登録品種栽培負担増の懸念が交錯し、さまざまな可能性を考慮したうえでの慎重な姿勢が問われるものであるため、一時的な法改正見送りに対して「もう日本の農業は終わりだ」と絶望的な気持ちになる必要はないと感じます。

新品種開発には膨大な時間とお金が必要

日本国内における新品種の開発には、膨大な時間とお金がかかっています。優れた新品種を栽培するためには、毎年掛け合わせをしてその中から優れたものを選び出す地道な作業を行わなければなりません。新たな品種を生み出すには、品種改良に必要な経費と人件費がコストとしてかさみます。山形県の試算によると、品種改良に必要なものを購入する予算が年間2000万円、1人あたり年間500万円のスタッフが6人いるので、年間3000万円。2000万円と3000万円で年間5000万円がかかります。この費用は税金によって賄われる計算となります。

新たな品種を生み出すには、1年間では難しく、10年かかることも珍しくはありません。そうなると5億円が必要となります。このように、おいしくて見た目に優れる新品種の開発というのは、トライアル・アンド・エラーの泥臭い作業の連続した先にあります。日本国内に優れた品種が数多く存在する理由は、すべて「よりいいものをつくりたい」と願う職人技に近い日本人の意識的コミットメントから生まれていることは明らかです。

新品種開発における問題点

昨今の事例を挙げると、白いイチゴが人気を博していますが、公設研究機関の「栃木県農業試験場イチゴ研究所」に取材したところによると「偶然できた白いイチゴを使って、交配を重ねて白い見た目と、甘い味を作り出した」といいます。フルーツの世界についていえば、テクノロジーの発達した今でもいいものは人に手によって作られています。

製造業や医学の発展におけるイノベーションと、青果物の種の開発には寸分の違いもありません。あるとすれば、青果物であるためにイノベーションプロセスに記録が残りづらく、苗が流出してもトラッキングが難しい点にあります。それゆえ海外流出をふせぐためにあらゆる取り組みが求められます。そして種苗法改正はその取り組みの1つだといえるでしょう。

日本の農業を守るために本当にすべきこととは

過去にカーリング娘が「韓国のイチゴはおいしい」と発言したことが話題になりました。詳細は拙記事で取り上げていますが、この時には韓国は日本のイチゴを盗んだ揚げ句、イチャモンレベルの言い訳をして自国産として流通させているのです。

日本の優れたフルーツが海外に流出することの問題点は、日本が国外におけるイニシアチブを失うことにあります。アジア太平洋地域におけるフルーツの存在感は年々、韓国がその勢力を高めています。Worlds top exportsによると、2019年における生イチゴ(フローズンでないもの輸出量は韓国が52700万ドル、日本は19300万ドルと2.7倍もの差をつけられています。過去記事で述べた通り、韓国は日本のイチゴを使って外貨獲得に奔走しており、イチゴの他にも多数の品種を不当に栽培しているとみられます。これ以上、日本の農家の知的財産を流出させつづけてはいけないのです。

海外に流出し、現地で勝手に栽培されてしまうと、もはやロイヤルティの請求はもちろん、取り戻すことなどが極めて困難になります。日本の青果物をやすやすと奪い取られないための施策が求められている時だといえるのではないでしょうか。

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