天牛(紙切り虫)

私が関心のある、気に入った、「新聞」・「メルマガ」等のニュースをまとめて紹介します。「コメント」は歓迎ですが、「公開」の前に、判断をさせていただきます。

カテゴリ: 就職・転職・起業関係

PRESIDENT Online(新井 勝己三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニアアナリスト)

2020/9/14

 

派遣分野で続く慢性的人手不足

新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞し、人材業界も急激な落ち込みを見せました。日本生産技能労務協会の発表する調査結果によると、人材の不足感を示す指数が23となっており、2019年末調査時の数値78と比べ、大幅に低下しています。コロナショック以前の水準に戻るのは早くても2021年初旬になるでしょう。

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metamorworks

                     ※写真はイメージです

 

今回特に落ち込みが顕著だったのは広告求人、人材紹介を行うリクルーティングの分野です。求人広告の掲載の取りやめや、仲介手数料を企業側が絞ったことで案件獲得が難しくなっているのが主な要因です。

それに比べて、落ち込み幅が少なかったのが人材派遣、スタッフィングの分野です。大きく落ち込んだリーマンショック時の市場変化を見ても、翌年には製造派遣はいち早く回復を見せており、今回も早期回復が見込めます。

ですが人材派遣の分野では、コロナショック前からの慢性的な人材不足が続いています。

多くの業種では人手不足は続く

リーマンショック前の07年は有効求人倍率が1.04倍でしたが、09年には0.47倍まで下がりました。しかし、今回のコロナショックの前は人材市場が活況を呈しており、有効求人倍率は過去最高の1.6倍前後を推移しています。それを鑑みると、今回のコロナショックで小売りや外食など直接的な打撃を受けている企業は多いものの、ほかの多くの業種では人手不足は続くため、まだまだ堅調に伸びると見ています。特にエンジニア派遣に関しては、多くの業種でデジタル化を急ぐ機運が高まっており、ほぼコロナの影響を受けずに推移しています。

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もう1つ人材派遣の分野で注目しているのが、働き方改革への対応です。労働派遣法の改正や、同一労働同一賃金などの一連の働き方改革への対応が求められており、クライアントの企業側は派遣元企業への対応を強めています。コンプライアンスリスクの観点から委託企業先を絞り、派遣事業者の集約化が進むことが推定されます。もともと人材派遣の分野は、トップの企業でも市場シェアが5%前後と参入企業が多い分野ですが、今後は製造派遣に強いUTグループやエンジニア派遣のテクノプロ、メイテックなどの上位企業に集約が進むと見ています。

コロナショックの影響で204月に解禁予定だった新卒採用の分野にも大きな変化が起こっており、20年は就活のオンライン化が進むなど、採用活動の手法に大きな変化が起こっています。企業側の採用人数も減少傾向にあり、市場全体への悪影響は避けられません。

一方で、今回のコロナショックは新卒一括採用から、新卒の通年採用への大きな変化の契機になるともいえます。経団連の中西宏明会長が「新卒一括採用の見直し」について言及したり、トヨタ自動車の豊田章男社長が「今後終身雇用の継続は難しい」と発言するなど、懸念を示していた採用・雇用の在り方が一気に前進するかもしれません。

また若手・20代の就職・転職市場で注目を集めているのが、学情が運営する「Re就活」です。同社は新卒採用向けのイベントを中心に売り上げを拡大し、大きな注目を集めています。

人材市場においてコロナショックの影響は、よい変化へのスタート地点になるかもしれません。


プレジデント 2020
年7月31日号

 

 

 

ビジネスパーソン700人調査(上)

日経スタイル(日経転職版編集部 宮下奈緒子)

2020/9/12

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                                  リモートワークの導入は転職を検討するきっかけにもなった(写真はイメージ) =PIXTA

 
転職への関心が急速に高まっている。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だ。就職・転職支援の日経HR(東京・千代田)が実施したアンケート調査では、約6割が「転職への関心が高まった」と回答。コロナ禍に伴う需要減などで、現在の勤め先や業界の成長性を不安視する層に加え、在宅勤務をはじめとする新しい働き方を実践しやすい職場を志向する人が多かった。ただ、今後の転職活動については約8割が「非常に厳しくなる」と悲観的な見方を示した。

このアンケート調査は日経HRが「日経キャリアNET」登録会員を対象に、2020730日から87日にかけて実施した。有効回答数は735人。

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新型コロナウイルスの感染拡大後、転職を意識する人が増えた

 非常に高まった 35

少し高まった 22
変わらない 36
少し低くなった 5
非常に低くなった 1
その他 1


コロナ禍を経験して転職への関心について変化があったかを聞いたところ、「非常に高まった」が
35%、「少し高まった」が22%で、合わせておよそ6割となった。転職意向の高まりを年代別で見ると、20代(61%)と40代(62%)が、30代と50代(ともに54%)を上回っている。「非常に低くなった」(1%)、「少し低くなった」(5%)は合計しても1割に満たず、今回の調査からは、コロナが総じてビジネスパーソンの転職意欲を引き出す方向に作用したといえそうだ。

「転職意向が高まった」理由としては、現在の会社や業界の将来への不安や、在宅勤務ができなかったり働き方改革の速度が遅かったりする会社に対する不満が多く示された。「リモートワークできる会社に転職したい」や「多様な働き方ができる職場に魅力を感じる」など、柔軟な働き方を希望する意見が目立った。自粛期間をへて、働き方やキャリアについて見つめ直す時間が増えたことによって、在宅勤務や副業が可能な新しいキャリアを模索するようになった人も多いようだ。

自由回答から透けて見える、勤め先への「がっかり感」

アンケートに含まれていた自由回答を分析すると、転職する気持ちが強まった人たちが勤め先に不満を募らせている様子が読み取れる。いったんはリモートワークを採用したのに、しばらくたって出社が基本の旧スタイルに戻したケースも少なくないようだ。

【自由回答】

非常に高まった
・業界が苦しい(51歳男性、ホテル)
・自社の、働き方を変えようとする意識の低さに嫌気がさした(36歳男性、銀行)
・常時リモートワークできるところで働きたい(28歳女性、メーカー)
・コロナですら変われない会社を見て、見切りをつける最後の一押しになった(34歳女性、生保・損保)
・自宅で自分を見つめ直す時間があり、転職のリサーチに使えた(54歳女性、IT


少し高まった
・在宅勤務を推奨しない会社に危機を感じる(45歳男性、IT
DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革を推進できる絶好のチャンスだったのに、意識も仕事のやり方もコロナ前に戻ってしまった会社の姿勢に疑問を持った(58歳男性、紙パルプ)
・緊急宣言の解除後、在宅勤務できる雰囲気になっていない(30歳女性、化学)


変わらない
・コロナの影響が少なく給料など変わらない(28歳女性、建設関連)
・コロナに関係なく、転職意思が固い(42歳女性、コンサルティング)

転職意向が「非常に高まった」「少し高まった」と回答した人に、転職に向けて具体的に始めたことがあるかを尋ねたところ(複数回答)、「転職サイトに登録した」が64%、「履歴書・職務経歴書を作成した」が42%、「人材紹介会社に登録した」が35%となったほか、「業界・企業に関する情報収集を始めた」(22%)、「自己分析・キャリアの棚卸しをした」(20%)、「仕事に必要な知識・スキルアップの学び直しを始めた」(16%)が続いた。

転職への関心が高まる半面、転職市場の先行きについては厳しい見方が大勢を占める。「今後の転職活動がどのようになるとみているか」を聞いたところ、「非常に厳しくなる」が44%、「やや厳しくなる」が33%と、8割近くが先行きの厳しさを予想した。「非常に楽になる」と回答した人はおらず、「やや楽になる」も1%にとどまった。

リモートワーク・在宅勤務を転職先選びで重視

転職先を選ぶ基準については、「給与・待遇」(80%)に続き、「働きやすい制度(リモートワーク・在宅勤務など)」(44%)との回答が多かった。「休日・休暇」(38%)や「福利厚生制度」(21%)といったワークライフバランスに関連する項目が上位に並んだほか、「副業が可能」を挙げた人が5%に上り、リモートワーク希望者と合わせ、新しい働き方を志向するビジネスパーソンが増えている兆しとみてとれる。

前回(20202月)の調査では、「働きやすい制度(リモートワーク、育休など)」は13%で8番目だった。3つまで選択可能(今回5つまで)にしていたほか、「働きやすい制度」の選択肢にリモートワークや育休などをまとめていたため一概に比較することはできないものの、リモートワークを重視する層が大幅に広がっているとみられる。

「新しい働き方」のなかで、今後挑戦してみたいことを聞いたところ(複数回答)、「リモートワーク・在宅勤務」が52%でトップ。そのほか、「副業(所属組織で働きながらの形態)」39%、「副業(所属組織と異なる組織で働く形態)」35%と、副業への関心の高さがうかがえるほか、「週休3日など休日が多い働き方」(34%)、「フリーランス・個人事業主」(19%)、「地方都市への移住」(16%)、「起業」(16%)など様々なタイプの「新しい働き方」が注目を集めているようだ。

年代別の比較で、「リモートワーク・在宅勤務」は20代(61%)、30代(60%)、40代(57%)と差はなかったが、50代は43%と他の年代に比べて低かった。副業に関しては、所属に属すか属さないかで年代に差が出た。「所属組織で働きながらの副業」は20代(52%)が高く、30代、40代、50代は、それぞれ41%、38%、37%。「他社で働く副業」については、30代(37%)、40代(33%)、50代(37%)が高く、20代は21%と低かった。「地方都市への移住」は20代と30代が21%、40代と50代が15%と差が出た。

転職に向けてすでに活動していた人を対象に、コロナによって自身の活動に変化があったか、という質問への回答では「以前と変わらないペースで続けている」が52%で最多だったものの、「一時停止したがその後再開した」(12%)、「転職すべきか迷うようになった」(11%)、「活動を停止した」(7%)など何らかの影響を受けた層も3割に達した。

転職活動における「ニューノーマル」ともいえる電話やウェブによる「リモート面接」については約4割が「受けたことがある」と回答。「リモート面接で採用担当者に言いたいことや気持ちを伝えることができたか」という質問には6割程度が「そう思う」とした半面、「対話がぎこちなくなる」「相手の表情が分からずコミュニケーションがとりづらい」など実際に会わずに自分の言いたいことを伝える難しさを感じている人もいた。

DIAMOND Online(松嶋千春:清談社)

2020.9.11

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Photo:PIXTA

いまや、新卒や転職の採用面接はリモート(オンライン)に移行しつつある。対話する点においてはリモートも対面も同じだと思われるが、実際の採用の現場では、注目すべきポイントや作法が変わっていたりするのだろうか。(清談社 松嶋千春)

通信の不具合や背景が面接の印象を左右する場合も

 大手人材サービス企業のエン・ジャパンでは、自社の採用面接をフルリモート化。1次から最終まで、Web会議ツール「Zoom」や「Skype」を使って面接を実施しているが、対面とリモートで大きな違いはないのか。中途採用を担当している土屋茜氏は、次のように語る。

「対面でもリモートでも採用基準は変えていないので、見るべきポイントとしてはそんなに違いはありません。複数名のリモート面接でも4131の面接であれば問題ないかと思います。対面の場でもグループ面接などでは1人が話して他の人が聞いているというふうに、11のコミュニケーションが複数回生じますので」(土屋氏)

 では、リモート面接において好印象なマナーとは具体的にどのようなものなのか。

「まずは目線ですね。どうしても相手の表情を見たいと画面を見てしまいがちですが、カメラから目線をずらしてしまうと相手には下を向いているように写ってしまいます。ずっとは難しくとも意識的にカメラへ目線を向けるといいです。また、オンラインでは雰囲気が伝わりづらいため、表情や反応が薄いと面接官としては不安になります。笑顔を意識したり、相づちを大きめにするようにしたりなど、対面時より大げさに『反応する』ことを心掛けるといいでしょう」(土屋氏)

 自宅で面接を受ける人が多いため、面接会場のような緊張感はどうしても薄れてしまいがち。「家であってもTPOを意識した服装や、メモをとる際に断りを入れるなど、対面と同じ気遣いを意識することが必要」と土屋氏は言う。この他にも、合否理由に直結はしないものの印象を左右するポイントがあるという。

「オンラインツールのログイン名が数字の羅列や私用の名前になっている方がたまにいらっしゃいます。面接はオフィシャルな場ですので、フルネームにしておくと良いでしょう。また、背景にも注意が必要です。散らかっている部屋や趣味があふれる部屋などをそのまま背景に写してしまうと、『相手にどう見られるかを意識しない人なのかな』という印象につながってしまいます。部屋を整えたり、本棚や壁の近くに移動したり、という配慮をしたいものです。ツールによっては背景設定ができるので、その機能を活用することもおすすめします」(土屋氏)

 リモートの場合、直接対面するよりも“圧”が弱く、リラックスして臨めそうだが、「緊張以前の問題で不具合が生じることもある」と、エン・ジャパンの中途採用マネージャーの豊田雄大氏は話す。

「リモート面接では通信環境やデバイスの状態による不具合が生じてしまうケースが出てきています。音声が聞こえづらかったり、逆に声が届かなかったりと対面の面接であれば気をつかわなくていいところに気をつかわなければならないことも。本来のパフォーマンスを発揮する上で、若干ハンディがあると感じました」(豊田氏)

 これには土屋氏も「通信が途切れることについては、どちらに問題があるか分からないので致し方ないものと捉えています。われわれ人事からは『通信環境が整った、周りの雑音が入ってこない場所で面接を受けましょう』といった点や、『接続できない場合の連絡先』を必ず事前に伝えるようにしています」と、リモートならではの配慮を見せた。

リモート面接への適応が採用力の底上げにつながる

 またエン・ジャパンでは、リモート面接での人事の対応を面接官の育成にも役立てているそうだ。

「弊社では営業職など違う職種から人事に異動するケースがあります。面接経験の少ない社員が面接力を高めるために、先輩社員と一緒に自分の対応を見返してアドバイスをもらったり、先輩社員の動画を見て質疑応答への対応を学んだりしています。自分のやりとりを客観的に見ることで、表情や声色などのくせにも気付くことができ、面接官の成長につながっていると思います」(土屋氏)

 基本的に面接は自宅から行うようになり、面接官の工数はかなり削減されたという。対面面接の場合は、来社した求職者をブースに連れて行き、面接後は見送りをしてブースを片付け、別フロアに戻るといったことが必要だった。

 ところが、リモート面接であればその場で面接をすぐに開始できるので、効率的な面接設定が可能。その結果、1日に面接できる数が増加している。求職者にとっても面接会場までの移動にかかる時間や交通費が発生しない。面接官・求職者双方の時間的・経済的負担を減らせるのが最大のメリットだ。

 それだけではなく、リモート面接への取り組み自体が採用力の底上げにもつながっているようだ。

「約80%の求職者はオンライン面接に肯定的というデータがあり、『リモート面接に対応している企業は世の中の変化に適応している会社である』と捉えられているようです。多忙な方には『30分だけお話しませんか』と臨機応変に面談の機会を設けられることが大きなメリットであると感じます」(豊田氏)

孤独を抱える中途社員をチャットでフォロー

 コロナ禍で入社した社員たちは、研修や実務もリモート化されているそうだが、そこでミスマッチは起きていないのだろうか。

4月入社の新卒社員は、選考過程で会社に来て社員と顔を合わせる機会があったので思いのほか順応しています。一方で、34月に選考を受けて5月以降に入社した中途社員に関しては、研修もオンラインで実施しています。ほとんどの人が在宅を基本とした形で実務に入っているため、会社への理解や帰属意識の醸成が目下の課題です」(豊田氏)

 同期や先輩と顔を合わせる機会がない中途社員からは、「孤独を感じる」という声も一部で上がっているそうだが、そうした社員の不安を払拭すべく、会社としてもフォローを欠かさない。

TeamsSlackなどのチャットツールを使って、『いつでも相談してね』と上司から呼びかけたり、中途入社の社員同士でグループを作って雑談をしたりしているようです。また、部署毎にオンライン歓迎ランチ会や同期でオンライン飲み会を開いたりなどして、相互理解を深めています。加えて、社内報のen soku!YouTubeを通じた社員向けの情報発信を強化。会社理解や帰属意識の醸成に向けて取り組んでいます」(豊田氏)

リモート面接の実施率は6月以降減少傾向に

 クライアント企業に関しては、業界によってリモート面接への順応の度合いに差があったという。

ITWEB、人材、コンサルティングなどの業界では元々ITデバイスに慣れているということもあり、スマートにシフトできた企業が多かったようです。メーカーや不動産など業務上の対面比率が高い業界の企業に関しては、45月の採用は見合わせて6月から動き出そうという傾向が見られました」(豊田氏)

今回、新たにリモート面接を導入することになったクライアントからは戸惑いの声が上がり、不慣れな企業のために担当営業がレクチャーすることもあったそうだ。

「要点を資料にまとめ、リモート面接の練習に付き合い、目線の合わせ方や質問のタイミングなどをレクチャーするケースもあるようです。対面の面接にこだわっていたクライアントも、実際にリモート面接を実施してみると『日程調整がしやすいし、面接に来る方への交通費も支払わずに済むし、いいね』と好感触で、現在もリモート面接を続けています」(豊田氏)

 クライアントのリモート面接の実施率は、緊急事態宣言下で89割だったが、6月以降は67割に下がっているそう。今後、新型コロナウイルス感染症の猛威に収拾がつけば、このまま対面へと戻っていくのだろうか。

「対面に戻す企業も出てくるとは思いますが、求職者側はリモート面接にメリットを感じており、『対面面接ならこの企業の選考は辞退しよう』と考えるケースも起きてくる可能性はあります。まだまだ新型コロナウイルス感染症の収束が見えない状況下では、リモート面接の必要性は引き続き高いと考えています。弊社の場合は、フルリモート面接で入社した社員も対面面接の社員と同様に活躍していることから、リモート面接を継続する方向で動いています」(豊田氏)

 中途採用の現場においては、フルリモートで固めるというより、リモート面接を選択肢の1つとして活用する方針のようだ。

「とはいえ、ポジションや状況によっては一度も会わずに決めるというのは、求職者にとってベストの選択ではない可能性があります。特に管理職の場合は上層部との相性に関わってくる部分があるので、対面でフィーリングを確認する行程は挟みたくなりますね。選考の最終過程では、リモートであれ対面であれ、求職者が選べるように体制を整えておきたいと思います」(豊田氏)

 エン・ジャパンでは次の新卒採用に向けたインターンシップをリモートで実施する予定で、いかに臨場感や連帯感をつくるかといったところを模索中だ。「リモート元年」の採用活動の可能性がどこまで広がっていくのか、分割画面での立ち回りが物を言う時代はもう来ているのかもしれない。

〈関連リンク〉
エン・ジャパン

行動面接で判断するには限界がある

ハーバード・ビジネス・レビュー(アレックス・ハイマン :レス・アノイングCRM共同経営者兼ビジネス開発部門責任者 

2020.8.25

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            Laurence Dutton/Getty Images


優れた能力を有することはもちろん、自社のカルチャーにも適応できる人材を、どうすれば採用できるのか。多くの企業が、候補者の過去の行動を判断基準とする行動面接を実施しているが、それは経歴に関するストーリーテリングの能力を測れるだけで、批判的思考や対人関係スキルを把握することはできない。本稿では、適材適所の人材を見つけるための
4つのアプローチを示す。


 CRMソフトウェアの開発を手掛ける私たちの会社では、社員を採用し始めてほどなく、気づいたことがあった。従来型の採用面接のプロセスには、控えめに言っても欠陥があるとわかったのだ。

 私たちは当時、社員を6人から18人に増やしたいと考えていた。採用活動における目標は、企業文化に貢献できて、質の高い仕事を行い、長く会社に在籍してくれる優秀な人物を採用することだった。

 私たちはこのとき、社員の離職率を抑えたいという考えの下、時代遅れの行動面接(採用候補者の過去の行動を答えさせる質問をする)に頼るのをやめて、面接プロセスの最適化を目指すことにした。

 採用面接での古典的な問いと言えば、たとえば「あなたの最大の強みと弱みを教えてください」「仕事で試練を乗り越えたときの話を聞かせてください」といったものだろう。

 いまでも、このような面接を行っている企業が少なくない。それは、その企業の人たちも同じような質問をされた経験があるからにすぎない。一般的に採用されている面接方法は、世代間で受け継がれてきた伝統と言ってもよい。しかし、私たちが手痛い失敗を通じて思い知らされたように、このやり方では正しい評価ができない

 行動面接は、みずからの経歴に関する情報を伝える能力をテストするうえでは有効かもしれない。だが、ストーリーテリングやそれと類似のスキルが必要とされる職の採用活動でない限り、この方法によっては、採用候補者の能力に関して十分な情報を得られない場合が多い。

 私はチームの面々とともに、これまで5年間、この問題を解決しようと努力してきた。自分たちの経験と最新の研究結果をもとに、試行錯誤を重ねながら新しい採用面接プロセスをつくっていったのだ。

 そうやって編み出した手法は、求職者を旧来型の面接とはまったく異なる状況に放り込み、批判的思考(クリティカル・シンキング)の能力、テクノロジーの知識、対人関係スキルを把握するというものである。

 この方法を導入して以来、採用される社員の質が高まり、社員の会社への貢献も大きくなった。社員の定着率も大幅に向上した。過去7年間で正社員が退職したのはわずか4人。しかも、そのうち2人は大学院進学のため、もう2人は異業種の仕事に就くためだった。

 いま新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる企業にとっても、この採用面接プロセスが問題の解決策になりうると、私たちは考えている。

 世界の多くの企業は、生き延びるために支出を削減することを余儀なくされている。その一方で、消費者ニーズの変化に対応するために、社員に新しいスキルを学ばせたり、新しい社員を採用したりせざるをえない企業も少なくない。

 ところが、採用には莫大なコストがかかっているにもかかわらず、米国企業の約3社に1しか自社の採用プロセスの評価作業を行っていない。そのような状況で、私たちのアプローチを採用すれば、企業が適材適所の人材を見つけるための時間とコストを減らす効果があるかもしれない。

 そのアプローチとは、具体的にどのようなものなのか。以下で説明しよう。

パート1:質問

 まず理解しておいてほしいのは、私たちのプロセスが固定的なものではないということだ。

 私たちは、それぞれの候補者に期待するスキルを軸に面接を構成する。候補者にそのスキルを実証する機会を与えるようにしている。まったく同じ候補者は二人といないので、当然、まったく同じように進む面接は二つとない。

 面接を行う前には必ず、候補者に尋ねる問いを面接担当者同士ですり合わせる。それらの問いは、面接冒頭の対話パートで尋ねる。私たちは最初の4590分を割いて、候補者と話をする。この対話に費やす時間は、あえて厳密に決めていない。どのような方向に話が進んでもよいようにするためだ。

 私たちが候補者に投げ掛ける問いは、大きく3つのカテゴリーに分類できる。

1)候補者がどれくらい準備してきたかをテストするために、事前に調べやすいテーマについての問いを投げ掛ける。たとえば、「我が社についてどのようなことをご存じか教えてください」といった問いは、事前にグーグル検索で簡単に調べておけばすぐに答えられるはずだ。

2)批判的思考とテクノロジーに関する知識をテストするために、イエス/ノーでは答えられない問いを投げ掛けて、会話のきっかけをつくる。候補者に独創性を発揮させることが狙いだ。

 たとえば、エンジニアの面接では、ある課題(たとえば動物の写真を表示することなど)を成し遂げるアプリを、どのように開発するかを尋ねることが多い。顧客サービス部門やセールス部門の面接では、よく使っているソフトウェアを選んで、使用方法を実演させたりする。

 オフィスに招いて面接を行っていたときは、大きなモニターを使い、マウスとキーボードを操作させて、実演させていた。新型コロナウイルスの感染拡大でオフィスに候補者を招くことが難しくなってからは、ビデオ会議システムの「ズーム」で実演してもらっている。

3)人の話を聞く力とコミュニケーション能力をテストするためには、いくつかの質問を通じて指示を伝える。これにより、こちらが何を求めているかを候補者にはっきり示し、候補者がその指示に応えられるかを見るのだ。

 たとえば、有効にコミュニケーションを行えるかどうかを見たければ、「あなたの情熱の対象か、詳しく知っている物事、あるいは自分が名ばかりの専門家だと思うテーマについて説明してください。そのことについて私たちがまったく知識を持っていないという前提で話してください」などと言う。

 2つ目のカテゴリーと3つ目のカテゴリーの問いは、私たちがテーマを押しつけるのではなく、候補者がテーマを選べるようにする場合が多い。候補者が話したいと思うテーマで会話をしたいと思っているからだ。

 もし事前に準備する時間があったにもかかわらず、候補者が詳しく知らないテーマを選んだり、そのテーマについてうまく説明できなかったりした場合は、その面接や私たちの会社にあまり関心がないのだろうと判断する。

 一言で言えば、採用したいのは、先を読んでものを考えることができて、強い重圧がのしかかる局面でも真の知識と過去の経験を引き出せる人物だ。相手の聞きたいことを推測して答えるコツを持っているだけの人には興味がない。

 現在はビデオ会議システムを利用して、バーチャルにこのような面接を行っている。このやり方には利点もある。ビデオ会議システムを用いることにより、新たに必要になった別のスキルもテストできる。そのスキルとは、オンライン・コミュニケーションのスキルだ。

 ズームなどのプログラムを活用する能力があるかどうかも調べられるし、ビデオ会議での振る舞い方も見ることができる。この点は、今後きわめて重要なスキルになるだろう。私たちのチームのメンバーは当分の間、売り込み先や顧客、同僚とビデオ会議で話すことになるからだ。

パート2:テクノロジーに関するスキル

 対話パートのあとは、やはり4590分くらいかけて、候補者と、その人物の専門分野のエキスパートであるチームメンバーが話をする。それに続いて、コラボレーションのスキルを試すための短いエクササイズを行わせる。

 このときチームメンバーは、採用後に携わることになる職務に関連した質問をする場合が多い。候補者がその仕事に本当に興味を持っているかを判断するためだ。顧客サービスの職では、人を助けることにやり甲斐を感じるか、電話で話すことが好きかといったことを尋ねる。

 状況によっては、候補者が何に関心を持っていて、どのような仕事に最もやり甲斐を感じるかなど、もっと間接的で一般的なことも尋ねる。愛情を持てる仕事に携わっている社員は、長く会社にとどまる傾向があるとわかっているからだ。

 エクササイズでは、候補者が実際にどのようにスキルを活用し、同僚とどのくらいコラボレーションができるかを見るための有効な設定を用意する。この活動は、特定のチームで仕事をするのがどのような経験かを知る機会にもなる。

 たとえば、エンジニア職の採用候補者には、ペア・プログラミングを行わせたりする。2人にペアを組ませて、問題解決に取り組ませるエクササイズだ。エンジニア職の採用でこの方法を採用している企業は珍しくないが、私たちは同様のチームエクササイズをあらゆる役職の採用面接で実践している。

 対話パートと同様、このパートでも、どのようなテーマを取り上げるかを事前に候補者に教えている。それにより、候補者が前もって準備してくるように義務づけることができる。

 画面共有などの機能を備えたビデオ会議システムや、プログラミングのリモート面接用に開発されたコードバンク(CodeBunk)などのツールは、この種の面接をバーチャルに行うために役立つだろう。

パート3:文章のサンプル

 最初の面接の前後に、候補者に文章を書かせている企業は多い。しかし、この要素はもっとしっかり実行したほうがよい。適切に行えば、候補者が誰の手も借りずにどの程度の文章を書けるかがわかるからだ。

 私たちは採用する全社員に対して、大掛かりな編集作業なしで、場合によっては厳しい時間的制約の下で明晰な文章を書けることを求めている。バーチャル面接の場合、候補者が独力で執筆した確証は得られないが、私たちの手法を用いれば、候補者の文章力とコミュニケーションスキルをおおよそ把握できる。

 どのような課題を与えるかは、職種によって決まる。たとえば、顧客サービス部門であれば、腹を立てている顧客(架空の人物)からのメールと、私たちの会社の対外的なメッセージとして理想的と見なせるメールのサンプルを示す。そのうえで、サンプルを真似して、腹を立てている顧客への返信を書くよう指示する。

 返信を書く前に、可能な限りたくさん質問して、メモを取ってほしいと思っている。このとき、返信文の分量を具体的に指定することはしないが、サンプルが参考になるはずだ。

 オフィスで面接を行う場合は、静かな部屋で3045分与えて、返信を書き上げさせることが多い。バーチャル面接の場合は、ビデオ会議での会話を3045分中断して返信を書かせる。そのあと、オンラインでの面接を再開し、文面を検討しながら、特定の言葉や文章構造を用いた理由を尋ねる。

 私たちは提出された文章をもとに、候補者が批判的思考を実践して文章の構成とメッセージのトーンを考えられるか、全般的に思慮深い文章が書けるかを見ている。

パート4:ゲーム

 私たちは、候補者が未来の同僚たちと普段どのように接するかも知りたい。しかし、面接で「同僚はあなたのことをどのように評価していますか」「チームではどのような役割を果たすことが多いですか」といった質問を投げ掛けて、それに対する返答をもとに推測したりはしない。候補者の実際の行動を観察するのが私たちのやり方だ。

 オフィスに候補者を招いて面接を行うときは、ボードゲームをプレーさせて、ほかのプレーヤーとのやり取りを観察する。ここでは、ゼロ・サムの状況でプレーヤー同士を競わせるタイプのゲームではなく、プレーヤーが力を合わせて一つの目標を追求するタイプのゲームを用いる。

 バーチャルで面接を行うときは、コードネーム(Codenamesのように、リモート環境でプレーしやすく、しかもコラボレーションの要素があるゲームをプレーさせる。

 目的は2つだ。1つは、候補者がチームメンバーとどのようにやり取りするかを見ること。もう1つは、私たちの会社が楽しい職場であると示すことだ。

 面接の過程で候補者は多くの社員と接するが、社員の中には自分の経歴や関心事を候補者に語らない人も多い。そこで、面接のこのパートでは、候補者と共通点が多くありそうな社員が参加するようにしている。

 たしかに、候補者が多様な社員と接することは、いまのような時期には特に重要だ。しかし、面接を受ける候補者たちには、居心地よく、打ち解けた雰囲気を味わい、自分がチームに受け入れられていると感じてほしい。

 たとえば、チームメンバーが全員45歳以上で、大学を卒業したばかりの人を面接するとすれば、かならずしも社内を探して最年少の人物を連れてくることはしない。年齢に関係なく、チーム内で最も社歴が浅く、経験の乏しいメンバーを加える場合もある。そうすることで、候補者が居心地よく感じ、経験豊富な社員の前で委縮しないようにするのが狙いだ。

 このパートで行うゲームの結果そのものは、重要ではない。目的はあくまでも、34時間のプロセスを通じて私たちの企業文化との相性がよいかどうかを見極めることだ。

 具体的には、思慮深さ、強いエンゲージメント、好奇心、そして、そのときやっていることを楽しむために(たとえ演技でも)目に見える努力をする姿勢を兼ね備えた人物を採用したい。これらの資質は、特定の職種で採用する人にだけ求めるものではない。これらは、会社全体で重要視している資質だ。

効果を定量評価する

 以上の4つの活動を実践するためには、たびたびそれを繰り返し、実験を重ねる必要がある。採用活動が一通り終わるたびに、いくつかの基準に照らして、面接方法の有効性について評価作業を行う。

 一つの基準は、どれくらいの頻度で、それぞれの活動により私たちの決定が左右されたかという点だ。つまり、これらのステップに従って面接を行うことで、より自信を持って判断できたかを問う。もしそうであれば、その面接方法が有効な証拠と見なせばよい。逆に、そうでなければ、どの点がうまくいっておらず、その問題を修正するためにどうすればよいのかを検討すべきだ。

 もっとも、面接方法の有効性を評価するうえで最も重んじている要素は、採用した人物の質だ。

 私たちは数年前、仕事の能力は完璧だけれど、仕事に関心を持っていないインターンを大勢採用していることに気づいた。採用活動の質を改善しなくてはならないと、私たちは思った。一部のインターンが実習終了時の面談で、私たちの会社での実習を次のステップへの踏み台と位置づけていたと語り、正社員採用の誘いを断ったのだ。

 そこで、テクノロジー面の資質を見るパートで、もっと業務に直結した質問をするようにした。そうすると、採用した人たちの定着率が上昇し始めた。

 面接が終わったあとに候補者に評価を下すプロセスも、修正する必要があった。最初の頃は、面接の日の間ずっと(本人のいない場所で)候補者のことを話題にし、互いの印象を論じ合っていた。しかし、このやり方だと、バイアスの影響を受けやすいなど、さまざまな問題が生じる恐れがあると気づいた。

 そこで、面接がすべて終わるまでは、誰とも候補者について話してはならないことにした。面接が終わると、面接に参加したメンバー全員がアンケートに記入する。候補者に関して評価を下したい、さまざまなテーマについて問うアンケートだ。全員の記入が終わってはじめて、話し合いを始める。

 リーダーは、採用が完全無欠のサイエンス足りえないと考えて、それを言い訳にして、これまで何十年も用いられてきた時代遅れの面接プロセスをそのまま続けたくなるのかもしれない。しかし、今日の経済環境で、採用に失敗するリスクを冒す余裕がある企業はほとんどないはずだ。

 私たちは、候補者のスキル、適性、企業文化との相性を明晰に把握できる面接プロセスを設計することは可能だと考えている。本稿で紹介したやり方は、その参考になるだろう。

HBR.org原文:How to Design a Better Hiring Process, June 26, 2020.

 

ウェブ採用に適応できる企業は優位

プレジデント(篠原 克周 フリーランスライター)

2020年8月14日号

 

新型コロナウイルスによる外出自粛で始まった採用でのウェブ面接。オンライン上でのやり取りで、応募者の資質を見通す方法を紹介する。


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写真はイメージです

 

面接で、ヤバい人は「たった2つの質問」で見抜 ける!

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年は合同説明会や企業説明会、対面での採用面接が相次いで中止となり、就活市場は大混乱に陥った。企業は感染防止の観点から説明会をオンラインに切り替え、採用活動も新卒・中途を問わず、ウェブ面接にシフト。これまで一部のビジネスマンの間で活用されていたウェブ会議サービス「Zoom(ズーム)」などを、採用現場で活用する企業が相次いだのである。

採用担当と応募者、双方ともに慣れぬ環境のなか、企業がウェブ面接で失敗しないためには、どんなポイントに注意すればいいのか? 独自の組織マネジメント理論でコンサルティングを行う識学の新規事業開発室室長・冨樫篤史氏と、武蔵野学院大学で「就職率100%」のゼミを12年もの間率い、日本パーソナルコミュニケーション協会代表理事も務める行動分析心理学者の吉井伯榮氏に話を聞いた。

まず吉井氏は「通常なら経済団体連合会が告知している31日に説明会が解禁になり、東京ビッグサイトなどの大規模な会場で始まるのですが、20年はそれができなくなりました。そして、企業も戸惑いながら、いきなりオンラインを導入することになったのです。当初、試行錯誤はあったものの、瓢箪から駒ではないですが、使い勝手がいいことに気づきました」と話す。

一方で冨樫氏は、ウェブ採用は自社の求人に興味や関心を持っている学生を集める「母集団形成」に大きな効果を発揮したと分析。これまでの母集団形成のツールは就職サイト・SNS、合同説明会、学内セミナー、大学・研究室訪問などだったが、年々減る働き手のなかからどうやって優秀な人材を見つけ採用していくかは企業の大きなテーマだった。ここにウェブ採用が加わって、意外な効果をもたらしたという。

日本の各地にいる応募者が気軽にエントリーできる

「ウェブでの説明会や面接で、日本の各地にいる応募者が気軽にエントリーできるようになり、募集範囲が一挙に広がりました。そして、密度の濃い母集団形成を効率的に行うことができることから、多くの企業の人事部がウェブ採用をポジティブに捉えています」(冨樫氏)

実は、遠隔地にいる応募者にとってもウェブでの就活は、交通費、宿泊費、時間などの節約や効率化に役立っている。

「北海道から九州まで、就活で彼らが出費する金額は、飲食代も合わせると11万~23万円もかかる。これがほとんどいらなくなるので、応募者にも利点が大きい。採用のグローバル化が進めば、世界中の応募者にウェブでアプローチできるようになり、企業にもメリットが大きいのです」(吉井氏)

ウェブでの面接で人数をこなせるようになった点も見逃せない。近年は大企業でさえ人事部は10人規模のところが多く、その人数で数千~1万人以上の応募者に対応しなければならない。

「この時期の人事部の残業時間は相当なものです。これがウェブになり1次面接でズームを取り入れたら、効率が段違いで良くなったと言います。通常であれば1人で1日・10人の面接がマックスでしたが、ウェブでやると30人まで可能になった。面接コストが確実に下がったわけです」(吉井氏)

また、対面だと面接時間は1人につき30分から1時間弱だが、ウェブだと115分から20分と短く、双方にとって時間の節約にもなる。

1次面接は1人の面接官が1人の応募者に対応します。すると判断が迷った場合、自分では決めきれないので、とりあえず2次面接に回すことになりがちです。しかし、ウェブ面接になってズームの録画機能を使うと、もう1度、採用担当者全員でチェックできるので、甘い選考を排除しやすくもなりました」(吉井氏)

ウェブのほうが有利なマインドセットの測定

百戦錬磨の採用担当者でさえ、採用してから「なぜこんな人材を採ってしまったのか」と後悔することが多々ある。ウェブ面接で注意すべき点について見ていくことにしよう。冨樫氏は、ウェブ面接でも対面と同様、採否を決める際は「スキルセット(職務遂行に必要な技能、経験、専門知識、コミュニケーション力)」と、「マインドセット(ヤル気、コミット力、雰囲気、人柄、企業文化へのフィット感など)」の2つの評価軸を重要視してほしいと訴える。

「スキルセットは、対面もウェブも変わらず割と簡単に評価できます。問題はマインドセットです。『この人、入社前に言っていたことが全然できてない』という不具合があったりしますが、それは面接で応募者一人一人のマインドセットを見抜くのが難しいからです。ただ、意外かもしれませんが、ウェブ面接のほうが個々人のマインドセットを見抜きやすいという側面があります。対面だと、ジェスチャーや醸し出す雰囲気から『ヤル気がありそうだ』と判断してしまうなど情報過多になるんです。一方、ウェブ面接だとそういう情報が削ぎ落とされるんですね」

マインドセットについては、冨樫氏の識学では、正確に評価するため、8つの要素で全体像を把握することを推奨する。それが図にある「自己評価」「組織内位置認識」「結果明確」「成果視点」「免責意識」「変化意識」「行動優先意識」「時感覚」。そのなかでも特に注意深くチェックしたほうがいいのが、「自己評価」と「組織内位置認識」なのだという。

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自己評価は「自分の評価は自分が決めると考える意識」のこと。端的に言ってしまえば、自己評価の度合いが強いと、自分を客観視できず、主観に基づいて自己を評価してしまいがちになる。「その自己評価の強い人は年齢を重ねるともう治りません。私たちの臨床的な経験から見ても、自己評価の強い人を面接で弾くだけで、入社後の不具合はミニマイズできます」との冨樫氏の指摘にはぜひ耳を傾けたい。

潜在的な問題児は見解を述べる

では、自己評価が強い人を見抜くにはどうすればいいのだろう。中途採用なら「これまでに全力で取り組んだ仕事とその達成度を教えてください」という質問で見抜けると冨樫氏は言う。

40歳の応募者の面接で、これまでに頑張った仕事を聞いて、『お客さまに喜んでいただけたことです』と返答があったとします。でもこれは単なる自分の『見解』にすぎず、自分を客観的に評価できていません。逆に客観的に評価できる人は『毎月何件成約しました』といった『事実』を示します。答えが見解にすぎないのか、それとも事実を正確に示すのかを見ていくだけで、自己評価の度合いを測定できます」

確かに自分の能力を客観視できず、揚げ句の果てに「自分のプレゼンを理解してくれないお客が悪い」と言ってのけるような部下がいたら上司はお手上げだろう。そして「なんでこんな人材を採用したのだ」と人事部にクレームをつけてくるはずだ。それだけにウェブ面接でも、この設問でふるいにかけておく必要があるのだ。

一方、吉井氏は過去についての質問を中心に面接することを勧める。

「たとえば失敗したときに、どうやって這い上がってきたか、そのプロセスをきちんと分析して自分の記憶のなかに留めておける人は、しっかり自己認識ができています。つまり今後何をするにしても、折れずに克服する胆力が備わっているということです。『失敗したときの心境はどうだったか、なぜ自分にとってその失敗が大きな痛手になったか、どのように頑張って克服し、心が強くなったのか』ということを尋ねられたときの分析ができているのです。ところが表面を取り繕っていて口先だけが上手い人は、過去の質問をされるとフリーズしてしまいます」

そして、あまり耳慣れない「組織内位置認識」は、簡単に言うと序列意識のようなもの。この組織内位置認識が弱い人には、自分は賢いと勘違いしていたり、自社の批判や批評を繰り返したり、上司を上司として認めず指示を聞かないなど、とにかく厄介な態度や、勝手な考えをする人が多い。

また「スキルセット」が優秀で一見いい人材に思えても、組織内位置認識が弱いと、組織全体にはマイナスになる可能性が高い。過度な上司批判や自社批判などを繰り返して、周囲の人間のモチベーションを下げてしまうからだ。新卒の場合は、通っていた大学のいい点・悪い点という質問で、批判の割合を測るとわかりやすい。批判のほうが一方的に多ければ要注意だ。

「中途採用の場合は、転職理由を深掘りしていくのに尽きます。面接の攻略本を読んできて、最初は優等生的なことを述べますが『ということは?』『つまり?』と切り込んでいくと、次第にネタが尽きて自社批判になっていきます。そこで組織内位置認識の弱さが露呈するわけです。新卒の場合は『大学のいい点、悪い点を言ってください』や『地元のいい点、悪い点を言ってください』という質問を投げかけると本音が出てきます。所属してきた集団の批判の割合が多い人には気をつけろということです」(冨樫氏)

背景の様子も要チェック

これまでの対面の面接では、エントリーシートに沿って質問したが、20年は、最初の5分間は学生が緊張せず臨めるような雰囲気づくりを企業側が行う傾向が多かった。実はそのなかで、どこまで緊張を解きほぐすことができるかによって、応募者の柔軟性をチェックすることも可能になる。

「たとえば、ウェブ面接では緊張気味だと、オドオドした表情が反映されやすくなります。またズームの扱いに慣れていないと、操作ばかりに気を取られて集中できていないのが一目瞭然です。結局、ウェブに柔軟に対応できずに、自分らしさが出せないまま面接が終わってしまう人が少なくありません」(吉井氏)

また、いきなりバッテリーが切れたり、画面がフリーズしたりというアクシデントが発生したときも注目だ。

「突発のトラブルに上手く対応できるかどうかを見る絶好の機会です。また、コロナ禍でいきなりデジタルの時代に移行して、どれだけデジタルに慣れているか、使いこなせているかも、企業側にとっても大きなチェックポイントになるでしょう」(吉井氏)

スマホのズームで面接を受ける学生

最近はパソコンを持っていない学生も多く、スマホのズームで面接を受ける学生もいたという。

「自宅にWi-Fi環境が整っておらず、カフェなどからアクセスしてくる人もいたものの、できれば自宅の落ち着いた部屋で面接を受ける人のほうが、社会人としてのTPOをわきまえた人材に育つと判断できます。また、自宅の部屋からアクセスした面接の際、部屋のなかが散らかっている人がたまにいますが、整理整頓がちゃんとできていないのはマイナスポイントになります。背景にまで気配りができているかどうかも見ておいたほうがいいでしょう」(冨樫氏)

吉井氏はウェブでの会話の仕方も要チェックだという。

「対面であれば、1人が一方的に30秒ぐらい話してもそれほど苦痛ではないと思いますが、ズームだと30秒ほど話し続けると、すごく長く1人でしゃべっている感覚が残ります。自分が言いたいことは15秒程度で完結させるよう気遣っているかどうかも見てください。もう1つは『、』(読点)で話をだらだらと続けてしまうのではなく、『。』(句点)で言いたいことを一つひとつ区切って話す人かどうかです。メリハリのある話をする人なら、物事に対する思考能力も高いと判断できます」

20年のウェブ面接では、ズームの機能を上手く活用した新たなスタイルが登場した。

「エントリーシートをパワーポイントで作らせ、ズームの面接でプレゼンテーションさせた企業がありました。これだと学生のプレゼンの技量やセンスが一発でわかります。私が面接官なら、前に触れたこれまでの人生のなかでの自分の失敗談と、そこからどう這い上がってきたかをテーマにしてプレゼンしてもらいます。そうすればプレゼンの技量やセンスと一緒に自己認識力や胆力も見ることができて、まさに一石二鳥になるからです」(吉井氏)

ズームも知らない社内の抵抗勢力

20年は仕方なくウェブ面接を実施するところが多かったが、21年からはリアルな対面の面接に戻るのではなく、積極的にウェブ面接を取り入れる企業が増えることも予想される。実際、「戻すべきじゃないものは戻さなくてもいいのでは」という意見も多い。

ウェブの特徴を上手く活用するのはIT企業に一日の長がある。会社の雰囲気を伝えるのに、VR(バーチャルリアリティ)を使い、社内を見られるようにしている企業もある。最終面接は実際に会社を訪問するわけだが、これはオンラインとオフラインを上手く使い分けている例だ。

しかし、企業のなかにはウェブによる面接・採用に対する抵抗勢力が存在しているのも事実で、50代以上の経営幹部たちであることが少なくないようである。

50代以降だと『話をするときは膝を詰めるのが常識』という感覚があるんです。若い人事担当者は頭を抱えています。まずはそういう部長や役員をウェブの画面の前に引きずり出してこなければなりません。聞いた話で笑ったのは、『ズーム』という単語を聞いて『THE BOOM(ザ・ブーム)?』『なんだ「島唄」のロックバンドの話か?』というやり取りがあり、ガックリしたというものです。ズームとブームとの区別もつかないんです」(冨樫氏)

これからはウェブ採用をモノにした企業が採用で優位に立っていく。逆に言えば、そこに適応できない企業は生き残れないということでもある。

冨樫篤史(とがし・あつし)
識学新規事業開発室室長
1980
年、東京都生まれ。立教大学卒業後、ジェイエイシーリクルートメントに入社し、管理職、幹部クラスの人材斡旋に従事。識学には2015年に参画。大阪営業部を経て現職。著書に『
伸びる新人は「これ」をやらない!』がある。

 


吉井伯榮(よしい・はくえい)
行動分析心理学者
1953
年、群馬県生まれ。客員教授を務める武蔵野学院大学で、毎年100%の就職内定率の実績をあげる。一般社団法人日本パーソナルコミュニケーション協会代表理事も務める。著書に『
Fラン大学でも東大に勝てる逆転の就活』。

 

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