天牛(紙切り虫)

私が関心のある、気に入った、「新聞」・「メルマガ」等のニュースをまとめて紹介します。「コメント」は歓迎ですが、「公開」の前に、判断をさせていただきます。

カテゴリ: ビジネス関係

日経ビジネス(松元 英樹)

2020918

 

顧客とのつながりを深め、ファンを醸成する。これまでメルマガやLINEの公式アカウントが担ってきたマーケティングツールの新たな選択肢として浮上してきたのが、オンライン会議システムの「Zoom」だ。セミナーやファンミーティング、オンライン接客など、先行企業の取り組みを追った。

 

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、急成長したサービスといえば米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのオンライン会議システム「Zoom」だ。従来は企業向けの会議システムにすぎなかったが、「Zoom飲み」という言葉が生まれるなど、一般消費者にも浸透した。ファンミーティングやオンライン接客など、企業にとってもZoomは顧客コミュニケーションの手段として広がりつつある。果たしてZoomは新たなマーケティングプラットフォームとして定着するのか。先行企業の事例から、その潜在力を探る。

1日当たりの会議参加数は3億人

 「新型コロナウイルスの感染拡大以降、増え方が格段に違う。20年初頭は新規の顧客企業は前年の倍程度だったが、それが新型コロナ以降は20倍に増えた」

 こう明かすのは、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの日本法人ZVC JAPAN(東京・千代田)の佐賀文宣カントリーゼネラルマネージャーだ。1912月には1000万人だった全世界における1日当たりの会議参加者数は、203月に1億人、同4月には3億人に達した。

 オンライン会議だけでなく「ショールームや店舗を持っている企業から、オンライン接客にZoomを使いたいといった引き合いがすごく増えている。また既存顧客との関係構築のため、ファンマーケティングに使いたいという要望も増えている」(佐賀氏)。

 これはズーム側にとっても想定外のことだった。「これまで、Zoomがマーケティング活用されることは予想していなかった。半歩譲って、イベントや展示会などBtoB(企業間取引)のマーケティングへの活用は想像できたかもしれない。だが、BtoC(消費者向け)のマーケティング活用は全くの想定外」と佐賀氏は驚きを隠さない。ユーザー主導で、これまでにない新しい活用法が進んでいる。

41


各社のZoomマーケティングに関する取り組みには主に「ファン醸成」「接客」「需要創出」という3つの要素がある

 
 これまで登場してきた各社のZoomマーケティングに関する取り組みを大きく分けると、ファンミーティングやセミナーのような「ファン醸成」、店舗での応対を代替する「接客」、新たな製品やサービスを生み出す「需要創出」の3つだ。ここでは「ファン醸成」の取り組みから紹介していこう。

Zoomはシニア世代も抵抗なし

 Web広告は製品やサービスに興味を持たせ、潜在ファンを生み出すマーケ手段として当たり前に使われている。Zoomという新しいコミュニケーション手段を取り込むことで、その役割を進化させようとする動きが出てきた。約35万人が利用するシニア向けコミュニティー「趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)」を運営するオースタンス(東京・新宿)は、これまでは主にサイト上の広告から趣味人倶楽部の収益を得てきた。今後はZoomを使ったオンラインイベントを開催し、外部企業からの協賛を受ける事業を加速させる。

 その皮切りとして開催したのが、20205月末から6月頭にかけて趣味人倶楽部で開いた、楽天のフリマアプリ「ラクマ」の講習会だ。参加者は、Zoomを通して楽天の担当者から、アプリの登録方法、写真の撮り方、出品の手続きなどの手ほどきを受けた。

42

シニア向けコミュニティー「趣味人倶楽部」で開催された楽天のフリマアプリ「ラクマ」のオンライン講習会


 Zoomの画面に並ぶ参加者は、「値段を下げて1200円で出品したら、すぐに買い手が付きました」「3つ出品をして、そのうちの1つは『専用』でお取り置きにしてとお返事をいただいたんです」と、喜びの声を上げた。

 07年にスタートした趣味人倶楽部のメンバーは、旅行・スポーツ・アート・グルメなど多彩なテーマのイベントを立ち上げて、同好の士と交流している。毎月約1600本ものイベントが開催されてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大後は実際にメンバー同士が会うことが難しくなった。最近では、オンライン会議ツールを通したイベントが増えている。

 シニア世代はZoomを使うことに困難を感じないのか。オンライン講習会に参加した70代男性は「ネットで調べたらZoomの使い方が書いてあって、参加するだけなら手間なしで簡単にできました。今後は小学校や中学校の同期会もオンラインでやってみたい」と話す。同じく講習会に参加した50代女性は「Zoomでその場にいるような感じでラクマの使い方を教えてもらい、学ぶツールとしていいなと思った。実際に出品したものが売れてうれしかった」と笑顔を見せた。普段からパソコンを使ってメンバー同士で交流しているだけに、新しい会議ツールにも、さほど抵抗はないようだ。

43

「画面を共有」機能でプレゼン資料を見せながら、楽天の担当者がラクマの使い方を説明した。Zoomの使い方の解説などは、趣味人倶楽部の事務局もサポートしている

 

 若者の間で一通り浸透したフリマ市場を拡大するには、シニア層の開拓が必要だといわれている。「フリマの利用が定着した若年層よりも、シニア層はモノを多く持っている傾向があり、不用品を処分しようという考え方も広がっている」(楽天)。新型コロナウイルスの影響で外出できず、部屋を整理しようという人が増えた影響もあり、ラクマにおける60代以上のユーザー数は2034月に1.6倍になった。「出品したものが売れたときの喜びや感動体験が、コミュニティーの中で口コミとして広がる」(楽天)と、シニア市場開拓の突破口としての趣味人倶楽部の可能性に着目している。

趣味人倶楽部が、外部企業とオンライン会議を使ったイベントを開催するのは今回が初めて。今後も製品の体験会やバーチャルツアーなど、外部との取り組みを強化する。例えば、20625日に開催した日本酒「獺祭(だっさい)」のイベントでは、製造する旭酒造(山口県岩国市)から参加者に利き酒セットを送り、Zoom上で蔵元のバーチャルツアーを実施した。参加料は2000円。

 提携する企業が支払うオンラインイベント実施の標準的な料金は50万円からと設定している。「イベントを通して学べる、修了の認定証を受け取って承認が得られる、コミュニケーションを取りつつ旅行をした気分になれるといった新たな体験を生み出し、プロモーションの場としての価値を高めていく」とオースタンスCEO(最高経営責任者)の菊川諒人氏は話す。

Zoom化でセミナーの人数が26倍に

 会議室などリアルの場で実施していた集客用のセミナーをZoomでオンライン化する取り組みも広がっている。Zoomの特性を生かし、企画の柔軟性を高めることで、セミナー参加申し込み数を前年の26倍に増やしたのは、AI(人工知能)を使った中古マンション情報サービスを展開するHousmart(ハウスマート、東京・中央)だ。新型コロナの感染が拡大した203月中旬から、Zoomを使い、中古マンション購入セミナー「カウルゼミ」をオンライン開催している。

 同社は192月からリアルの場での中古マンション購入セミナーを展開してきた。当初は50人ほどが集まる会議室で実施していたが「大人数のイベントでは周囲を気遣って、質問が出ないことが多い。そこで学区別、年収別、外国人向けなどセグメント別のテーマを掲げ、10人ほどに集まってもらうようにした」(カウルゼミの企画を担当するコミュニケーションデザイングループの佐藤郁江氏)。その効果によって「購入意欲の高い方の要望に応えられるようになり、19年末には参加した人の約9割が講師との個別相談に進むようになった」(佐藤氏)。

44

Housmartが開催した中古マンション購入セミナー。複数のオンライン会議システムを検討したがコストの安さでZoomを選択したという

 

 203月中旬には、新型コロナウイルスの影響により会議室でのセミナーの開催が難しくなり、オンライン化を余儀なくされた。4月の緊急事態宣言後は、多くの顧客が物件の見学を自粛。同社はオンラインセミナーへ注力する方針に切り替え、100人規模のオンラインセミナー開催に踏み切る。「コロナショック、本当に今買うべきか徹底解説」と題し、「購入を検討している誰もが気になっているテーマで開催した」(佐藤氏)。これが大きな反響を呼び、定員100人としていたところへ、400人以上の応募が寄せられた。

45

Housmartの不動産情報アプリ「カウル」。アプリ上の告知やメルマガで参加者を集め、セミナーを開催している


 
Zoom上では参加者が質問をテキストで書き込む機能があり、多くの質問が寄せられた。リアルのイベントでは大人数の時に対話が盛り上がらないという課題も克服できた。4月は3週連続で同じテーマのセミナーを開催し、毎回満席。5月から週末だけでなく、頻度を週3回に増やし、新型コロナに関連しながらも、より具体的な物件探しに関するテーマに切り替えていった。5月は緊急事態宣言の解除を見据えた具体的な物件探しの要望が高まっていると見たためだ。

そうしたオンラインセミナーを繰り返した結果、6月中旬には「物件の見学率が、昨年と同程度に戻っている」(佐藤氏)という早期の回復を果たせた。6月に入り少しずつ日常が戻る気配も見えてきたが、「イベント直前でも申し込め、気軽に自宅で参加できるため満足度が高い。このスタイルが定着していく可能性は高い」(佐藤氏)と見る。

オンライン接客も広がる

 Zoomマーケティングは「ファン醸成」に関するものが目立つが、「接客」「需要創出」に関するものも徐々に広がっている。「接客」の一例が、オンキヨー&パイオニアが2061日に開始した「オンライン相談」。Webページ上で日時を指定し、問い合わせ内容を記載して申し込むと、Zoomで担当者と話ができる。東京・秋葉原のショップ兼ショールーム「ONKYO BASE」に来店できない人に向けたサービスと位置づける。

 問い合わせの内容によって、マーケティング部門、営業や技術の担当者といった社員が応対する。きっかけは新型コロナだが、「リアル店だけでなくオンラインで販売や顧客との接点を進化させる」(オンキヨー&パイオニア営業部コーポレートマーケティング課長の家倉宏太郎氏)ために、コールセンターの担当者ではなく、あえて社員が対応する仕組みにした。「軌道に乗れば、即日対応をやっていきたい。それでこそお客との距離をオンラインで縮めていけるはずだ」(家倉氏)と見込む。

 趣味人倶楽部と獺祭の取り組みのようにオンラインイベント付きで商品を販売するケースは「需要創出」の一例と言えるだろう。Zoom関連の商品を投入する動きもある。ZOZO205月末、Zoomのバーチャル背景機能を生かすことで、柄を自由に変更できるTシャツ「GREENBACK TEE」の販売を開始した。「人と会わないから、出かけないから『服はいらない』ではなく、今だからこそ提示できる『ファッションの在り方』を考えて製品を開発した」(ZOZOテクノロジーズ クリエイティブディレクターの大久保真登氏)。

46

アプリ分析プラットフォーム「App Ape」の推計によるオンライン会議系アプリの日間利用者数(DAU)の推移。iOSAndroidの合算

 

 Zoomを導入した多くの企業は「コロナ後に一気に普及し、ユーザー数が多い」ことを理由に挙げる。実際、国内でZoomはどれだけ利用されているのか。データ分析会社フラー(千葉県柏市)の推計によると、Zoomの日間利用者数(DAU)はピーク時には140万に到達したが、その後はいったん落ち着いている。フラーのアプリ分析メディア「App Ape Lab」編集長・日影耕造氏は「どのアプリが覇権を握るかはまだ見えないが、Zoomはビジネスと個人利用の両方を取り込んでいる。基本無料で利用できるなどコストが安く、録画のしやすさ、会話の聞き取りやすさにも優位性がある」と指摘する。

 Zoomのマーケティング活用はこのまま広がっていくのか。それとも新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一時期のブームにすぎないのか。本特集では、その真価に迫る。

(写真提供/オースタンス、Housmart、オンキヨー&パイオニア、ZOZO

 

全米1000カ所超の小規模宅配拠点を計画

JBpress(小久保 重信)

2020.9.18

41

 

                                     アリゾナ州にあるアマゾンの倉庫施設(写真:AP/アフロ)

 

 米アマゾン・ドット・コムが全米1000カ所の都市近郊に小規模の宅配拠点を設置する計画だと、米ブルームバーグが報じている。

狙いは当日配送の拡大

 現在、アマゾンの物流拠点の多くは都市近郊の外れにある。今後は、ショッピングモールや大規模小売店、自動車販売店、ファストフード店などがある郊外住宅地近くに拠点を設ける。ゆくゆくは約1500カ所に拡大し、配送の迅速化を図るという。

 今年2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でアマゾンの物流網は逼迫した。それ以前はプライム会員向けの標準配送サービスとして翌日配送の対象地域や商品の拡大に力を入れていた。

 しかし、巣ごもり消費の拡大でEC(電子商取引)需要が急増。同社は顧客に約束していた翌々日配送を実現できなくった。その後計175000人を臨時雇用するなどして体制を強化。現在はコロナ禍以前の状態に戻りつつあるものの、さらなるサービス向上を目指し、当日配送の拡大を図っている。

 米シーネットによると、アマゾンは現在、全米44の大都市圏で当日配送サービスや即時配達サービス「Prime Now」を提供している。

 

ウォルマートなどの競合、ECでアマゾンに攻勢

 こうした中、小売大手がEC分野でアマゾンに攻勢をかけている。例えば最大手の米ウォルマートは915日、米国で有料会員サービス「Walmart+(ウォルマートプラス)」を始めた。食料品や日用品、家電製品などを追加料金なしで配達するというもので、年会費98ドル(約1300円)と、アマゾンの「Prime」の同119ドル(約12500円)より低く抑えた。

 ウォルマートは、米宅配代行サービス大手のインスタカートと提携し、米国で当日配送サービスを始めるとも報じられている。まずカリフォルニア州のロサンゼルスやサンフランシスコなど計4都市で試験サービスを開始。最短1時間で配達し、アマゾンの会員制生鮮食品宅配サービス「Amazon Fresh」やPrime Nowに対抗する。

 

ウォルマートはカナダのECサービス業者ショッピファイとの提携も明らかにしている。ショッピファイの登録業者がウォルマートのECマーケットプレイスに出品できるというもので、同社は年内に1200社の参加を見込んでいる。

9月中に発送・仕分センターなど100施設新設

 ウォルマートやディスカウントストア大手の米ターゲットなどは、数千店もの自社店舗を拠点にしてEC事業を拡大している。

 ブルームバーグは、アマゾンが新たに設置する小規模宅配拠点は、これら競合の動きに対抗する狙いがあると報じている。例えば、アマゾンは最近、マサチューセッツ州の都市ホールヨークに物流拠点を設置した。これは、周辺住民も含めた60万人以上をカバーする物流拠点だという。

 アマゾンは先ごろ、米国とカナダの物流拠点で10万人を追加採用すると明らかにした。これに伴い9月中に発送・仕分センターや宅配ステーションなど計100施設を開設する予定だ。

 アマゾンの物流網拡大計画については、経営不振で閉鎖した百貨店の跡地を活用しようという動きも出ている。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米ショッピングモール運営最大手のサイモン・プロパティー・グループとアマゾンはモール内百貨店の空きスペースの利用に関して協議中。

 アマゾンはこうした空間に「ミニ・フルフィルメントセンター(ミニ発送センター)」と呼ぶ物流施設を設置する可能性があると同紙は伝えている。

 

 から「オンライン朝礼」が不可欠

PRESIDENT Online (長尾 一洋 NIコンサルティング代表)

2020/9/18

 

テレワークが前提となり、オフィスで顔を合わせる機会は減ってしまった。そのとき部下をマネジメントすればいいのか。コンサルタントの長尾一洋氏は「部下のメンタルケアにはこれまで以上に気を使わなければならない。特に『3つのS』を意識してほしい」と説く——

21

 

写真はイメージです

 


適度な距離感や関係性をどうつくっていけばいいのか

テレワークという働き方が定着し、営業活動もオンラインで行うようになると、当然ですが上司と部下が顔を合わせる機会や時間は大幅に減少します。「会えない」「働いている様子が見えない」状況の中で、「部下とどのように接すればいいのか」「適度な距離感や関係性をどうつくっていけばいいのか」と悩む管理職の方は多いことと思います。

テレワーク時代の部下指導においては、3つの「S」を意識してください。

See(見る/見守る/見える化する)
Stroke
(存在を認める/働きかける)
Suggest
(提案する/フィードフォワード)

 

See」が見守るという意味を含んでいることにご注意ください。上司が部下を見るときは、どうしても「監視」しようとしがちですが、そうではなく、まるで幼い子に対するが如く「愛」をもって見守ることが大切です。会えないことで、部下の気持ちは見えにくくなります。それをきちんとしっかり見つめる。関心を持つ。管理や監視や干渉ではなく「見守る」姿勢が求められます。

リアルでの付き合い以上に丁寧な働きかけが不可欠

Stroke」という言葉は、カナダ出身の精神科医エリック・バーンが提唱した「交流分析」という心理学パーソナリティ理論の1つで、「人の存在や価値を認める働きかけ」のことです。

「がんばっているね」「君に頼んでよかった」と心の中で思うだけではなく、相手に伝えるための働きかけがストロークです。テレワークの生活が続くと、外部との交流が少なくなって孤独感や疎外感をつのらせて、それが大きなストレスになってしまうこともあるでしょう。オンライン上では「阿吽(あうん)の呼吸」も通じにくいようです。リアルでの付き合い以上に丁寧な働きかけが、円滑なコミュニケーションのためには欠かせません。

Suggest」は提案、つまり未来に向かっての声かけです。「こうしたらいいんじゃないか」「こんなふうに考えたら解決できるのでは?」という前向きなもので、意識したいのは「フィードフォワード」です。フィードバックが、すでに行われたことに対しての反省や叱責になりがちなのに比べて、フィードフォワードは未来に向けて今打つべき手を提案するものです。部下の行動の変化を促し、よりよい結果につなげていくことができます。

「コンタクトレス・ロープレ」をやってみよう

非常に効果的な部下指導のメソッドとして、ぜひお勧めしたいのが「コンタクトレス・ロープレ(ロールプレイング)」です。テレワークが進み、上司と部下、先輩と後輩が顔を合わせる時間はますます減っていくでしょう。身近な人からちょっとした説明のコツを学んだり、クロージングのテクニックを盗んだりするような機会もなくなってしまいます。

その穴を埋めるのが、コンタクトレス・ロープレです。営業部隊のいる会社では、以前は当り前のように行われていたロープレですが、最近は研修に取り入れるところも減ってしまいました。しかしロープレは、営業力アップに非常に効果があります。コンタクトレス(=非接触)での研修として、この機会にぜひ取り入れていただきたいと思います。

マンツーマンでもいいのですが、より効果的なのはグループ・ロープレです。上司や先輩1人と現場の営業担当者34人で1グループをつくります。最初は、上司(先輩)が顧客役、部下(後輩)が営業担当者として商談を行います。他の参加者はその様子を見学します。

一通りの商談が終わったら、見学していた人は気づいたことや感想を発表します。「表情が固かったよ」「説明がわかりにくいところがあった」など、思ったことを率直に伝えます。次は、営業担当者をチェンジして、順に同じように繰り返します。

「わかってるつもり」を解消できる

上司から一方的に「上から」指導されるよりも、同僚・仲間という目線からのアドバイスの方が受け入れやすいものです。また、自分が第三者として意見を述べる立場を経験することで新たな視点を得ることもできます。

22

               長尾一洋『コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書』(KADOKAWA

 

さらに、コンタクトレスでパソコンを通じて行うロープレのメリットとして「録画できる」ということがあります。自分自身の口ぐせや態度は、客観的に見ない限り案外気づかないものです。他人から指摘されたら反発してしまいますが、録画で確認すれば「納得!」となります。

「わかってはいるんだけど、できないんだよね」「やってるつもりだけど、結果が伴わない」。そういう悩みを抱えている人は多いと思いますが、頭でわかっていても行動できていなかったら、わかっていることにはなりません。「知る」「行う」「結果が伴う」の「知行果」を一致させるためにも、コンタクトレス・ロープレが役に立ってくれるでしょう。

じっと見つめられているのがプレッシャーでリアルなロープレに苦手意識をもっていた人も、コンタクトレスでならそれほどの圧迫感を感じずに、メリットだけを享受することができるはずです。


顔色が見えない中で部下のメンタルをどうケアするか

テレワーク時代のマネジメントを考えるうえで、管理する側として、これまで以上に注意を払いたいのが部下のメンタルケアです。

毎日顔を合わせていれば、「今日は『おはよう』の声にいつもの元気がなかったな」「暗い顔をしているけれど、何かトラブルがあったのかな」というふうに、日々の変化をキャッチして「異常シグナル」が自然とアンテナにひっかかります。声をかけて昼食に誘ったり、別室でゆっくり話を聞いたりすることで早めの対処ができます。

ところが、テレワークでは、それができません。だからと言って、たとえばLINEやチャットなどで雑談をしてコミュニケーションをとるというのも、就業時間を使ってやるには無駄な時間が増えて本末転倒のような気もします。

オンライン朝礼で一日のリズムをつくる

そこでお勧めしたいのが、オンライン朝礼、または夕礼です。チームの中に新入社員や転職・他部署から異動してきたばかりといったメンバーがいる場合には特にやってみるといいでしょう。

オンライン朝礼(または夕礼)というのは、毎日決まった時間にオンライン上に集まって、コンタクトレスで朝礼(夕礼)を行うということです。時間は10分から15分程度で十分でしょう。仕事の報告を詳しく行うというよりは、チーム全員が顔を見せ合って「おはよう」や「おつかれさま」を言い合うことが主な目的です。連帯感が生まれて、仕事や会社に慣れない新人には心のよりどころになり得ると思います。何より、決まった時間に実施することで1日のリズムにメリハリができて、行動計画を立てるうえでの指標にもなります。

気軽な情報交換の場として活用する

さらに言えば、テレワークでは、どうしても先輩や同僚のノウハウを学ぶ機会が少なくなります。わざわざ相談するほどのことではないけれど参考にしたいこと、ちょっと聞いてみたいことや教えてもらいたいことは、日々の業務の中でたくさん出てきます。そういう情報を気軽に交換する場としても、オンライン朝礼や夕礼をうまく活用するといいでしょう。

テレワーク時代になったからといって、上司と部下の在り方がガラリと変わってしまうわけではありません。ただ、これまで当たり前だった「毎日、顔を合わせる」ことがなくなったわけですから、その欠けた部分を埋めるための多少の工夫や新たな努力は必要です。さらに一歩進んで、テレワークという環境を活かしたより効率的なマネジメント術を確立していきたいものです。

 

 

日本経済新聞 電子版

2020/9/16

32

                                 ビザ要件の厳格化で、日本人駐在員は23割減る可能性も

 

シンガポールが自国民の雇用を確保するため、外国人のビザ取得要件を厳しくしている。早稲田・慶応大卒の30歳の日本人の場合、月給が50万円以上ないと専門職向けビザ(EP)が下りなくなっている。企業は日本から社員を派遣しにくくなり、現地化を一段と進める必要に迫られている。

シンガポール政府は国籍や年齢、学歴などに応じて、多くの駐在員が取得するEPに必要な月給水準を細かく定めている。基準の詳細は公表していないが、現地での就労を希望する外国人は政府がネット上で提供する自己診断ツールを使って、ビザの要件を満たしているかを推測できる。

人材紹介会社のJACリクルートメントがこのツールを使って、EP取得に必要な月給額を調べたところ、2020年に入って大きく引き上げられていたことが分かった。

31

上昇の理由はまず最低月給額の引き上げだ。政府は5月に3900シンガポールドル(約30万円)に上げたばかりのEP取得に必要な月給額を、9月に4500シンガポールドルに再び引き上げた。申請者の年齢が上がるにつれて、必要な月給額も高くなる仕組みで、45歳以上は8400シンガポールドル以上の月給がないとEPは取得できなくなった。


さらに学歴の基準も厳しくなった。早慶、一橋、大阪大学など約60の大学はこれまで必要な月給が最も少ない第1区分だったが、第2区分に降格になった。いまや第1区分に属する日本の大学は東大、京大、東京工業大学の3大学のみだ。JACの試算では、早慶卒の30歳の日本人がEP取得に必要な月給は、2年前に比べ1.5倍近くに跳ね上がっている。

12年後にシンガポールの日本人駐在員が23割減る可能性がある」。YCPホールディングスの粕本晋吾・東南アジア代表はビザ要件厳格化の影響は大きいとみる。大企業では、若手社員が月給要件を満たせなくなる恐れがある。

飲食、美容といったサービス業への影響も深刻だ。高卒の日本人シェフがビザを得るには、これまでも8千シンガポールドル程度の月給を求められることが少なくなかった。これ以上基準が上がれば日本料理店の経営が難しくなる。

シンガポールのリー・シェンロン首相は「外国人の雇用が一つの国籍に過度に偏っている企業には特に警告する」と述べ、進出企業に多様性の確保も求めている。シンガポールに住む日本人は約37千人と、これまで東南アジアではタイに次いで多かった。だが、新型コロナウイルスの発生を機に駐在員の役割の見直しも進む見通しで、今後は現地人材の育成にカジをきる日本企業が増えそうだ。

(シンガポール=中野貴司)

 

バンコク伊勢丹が撤退、商業車市場には中国製が猛攻


JBpress
(姫田 小夏:ジャーナリスト)

2020.9.15

21

          バンコク市内を走る日野自動車製の路線バス

 日本のメーカーが海外進出を図る際、有力候補地の筆頭に挙がるのがタイである。トヨタに代表されるように、タイに最初の海外拠点を設立した企業は少なくない。日系サプライヤーの進出が始まったのは1970年代。以来、日本の自動車メーカーが現地生産体制を強化していくなかで、タイはASEAN(東南アジア諸国連合)最大の自動車生産国に発展した。

 親日国ということもあり、タイには自動車産業のみならず多くの日系企業が進出した。外務省の統計によると、2018年の在留邦人数は75647人に達し、米国、中国、オーストラリアに次ぐ第4位となっている。1997年の23292人と比較すれば、20余年で3倍以上に増加したことになる。近年は、「チャイナプラスワン」としてタイ進出ブームが起こり、2012年には55634人と前年比で11%も増えた。

 文部科学省によれば、20204月時点で世界に日本人学校は95校あると言うが、バンコク日本人学校は最も歴史が古く、最大の規模を誇る。2000年代には中国の上海日本人学校と生徒数を競ったこともあったが、いまなお世界最大の日本人学校であり続けている。

バンコク伊勢丹がついに閉店

 だが、ここに来て日系企業のタイビジネスが転換期に差し掛かっている。

 1992年、バンコク伊勢丹が鳴り物入りで開店した。日系百貨店の開店は、現地の日本人駐在員とその家族に大いに歓迎された。

 しかし近年は、営業の継続が難しくなっていた。昨年(2019年)の夏、筆者が訪れたバンコク伊勢丹は、賑やかな大通りに面していながらも、ほとんどの人が店の前を素通りしていた。また、タイに居住する日本人が増加しているにもかかわらず、日本人客はほとんど見られなかった。

 タイ資本の最新の商業施設が次々に建てられる中で、旧態依然とした日本式の百貨店は苦しい戦いを強いられていた。テナント契約の満了を理由に、バンコク伊勢丹は今年8月末、ついに閉店した。

22
           8月末で閉店したバンコク伊勢丹

 筆者がバンコクを訪れた際、大通りに目を向けると、日系自動車メーカーが製造した路線バスが数多く走っていた。目を奪われたのは、その老朽化した車体だ。造られてから何十年前も経っているかのような古びた車体のバスが、時折黒い煙を上げながら走り回っていた。

 それは、日本の技術力と整備体制がもたらした奇跡と言っていいかもしれない。日野自動車について言えば、1977年にバンコク大量輸送公団(BMTA)に路線バスが採用されて以来、25年間にわたって納入が続いていた。

 しかし、近年は日本製の古いバスに代わって、中国メーカーの新エネルギー車がシェアを高めている。エアコンが効いた最新型の路線バスは、若い人たちに人気だ。中国は電気、ハイブリッド、天然ガス、燃料電池、トロリーなど多種多様なバスの輸出に力を入れており、最近ではタイの清掃車市場も狙っている。

23
          バンコク市内を走る真新しい中国製の新エネルギー車

 ものつくり大学名誉教授の田中正知氏によれば、日本製バスが国際市場で中国勢に押されているのは根本的な要因があるという。「日本は石油ショック時に乗用車を外貨の稼ぎ頭として厳しく鍛え、育てましたが、その一方、バスやトラックなどは産業を支える基盤だとして国策で保護しました。その結果、国際競争力を失うことになってしまったのです」。

拍車がかかる中国勢のタイへの投資

 中国は近年、タイへの投資を活発化させている。中国の2019年のタイへの直接投資金額(認可ベース)は738億バーツ(約2510億円)で、1位の日本の881億バーツ(約3000億円)に迫る勢いである。

 日本貿易振興機構(JETRO)によれば、認可ベースの大型案件では、商用車のタイヤ製造、金属製品・金属部品の製造、電気・電子製品の製造などへの投資があるという。申請ベースで見ると、中国は2600億バーツと、全体の5062億バーツ(約1.7兆円)の半数以上を占めて首位に立った。

中国は「一帯一路」構想と、タイの経済開発計画である「タイランド4.0」や「東部経済回廊」とを一体化させようと、タイへの投資に拍車をかけている。特に力を入れているのが、新エネルギー車市場だ。タイを製造拠点として、東南アジア、オーストラリアなどへ輸出することも構想している。中国勢は「タイの自動車市場は日系企業の牙城とはいえ、日系の優位性はガソリン車でしかない。東南アジアの新エネルギー車市場については真空地帯だ」(中国鉄鋼新聞)という認識が強い。

“玉突き”で弾き出される日系企業

 中国系企業のタイ進出の勢いは用地取得にも現れている。工場用地など事業用不動産を取り扱うGDM THAILAND社(本社:バンコク、社長:高尾博紀)には、中国の自動車関連企業からの問い合わせが急増しているという。

 高尾社長は、「中国企業の安価な製品に大手メーカーが発注をシフトさせてしまったため、安定的な受注を失ってしまう日系サプライヤーが出てきています」と、日系企業がタイから弾き出される“玉突き現象”が起きていることを明かす。

 同氏によれば、チャイナプラスワンのブームに乗り、勝てる要素がないままタイに進出した日系企業や、赤字を続けながらもなかなか損切ができない日系企業も散見されるそうだ。この先待ち受けるのは、日系企業のタイ撤退の続出――ということになるのだろうか。

 10年以上にわたってタイ市場の変遷を見てきた高尾氏はこう語る。「一部の企業はタイからの撤退を考えています。強い中堅企業もありますが、優勝劣敗の差は激しくなっています」。

 タイでは反王室を唱える若者が政治活動を活発化させている。そうした若者たちの間では、ファーウェイのスマホなど中国製品がすっかり身近な存在になっている。「日系企業の牙城」とも言われてきたタイで、いま静かに地殻変動が起きている。

 

↑このページのトップヘ