天牛(紙切り虫)

私が関心のある、気に入った、「新聞」・「メルマガ」等のニュースをまとめて紹介します。「コメント」は歓迎ですが、「公開」の前に、判断をさせていただきます。

カテゴリ: 医療・介護・福祉関係

PRESIDENT WOMAN(井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー)

2020/9/10

 

家族に介護が必要になったとき。あなたはどうしますか? 自宅介護か、施設に入所か、お金はどうかなど、考えるべきこと、するべきことがいろいろあり、時間も待ったなしです。そうした状況を助けてくれるのが、「育児・介護休業法」。制度の内容や、いざというときに気を付けるべきポイントを解説します。

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                      ※写真はイメージです(写真=iStock.comitakayuki

要介護者1人につき、通算93日の介護休業がとれる

家族に介護が必要になったとき、「介護離職という言葉が頭をかすめた」という人も少なくありません。そのような場面に身をおいたときに思い出してほしいのが、「育児・介護休業法」。介護離職を防ぐ目的から、親などの介護が必要になった場合、仕事を休んだり、勤務時間を短くしたりして、介護と仕事を両立させるために設けられたものです。

大きな柱は、休業や勤務体制と、賃金です。休業については、「介護休業」という制度が設けられています。介護が必要になった人(要介護者)1人につき、通算93日まで休業できるというもので、計93日の範囲内で、3回までに分けて取得できます。


93日では足りないと思うかもしれませんが、介護休業は実際に介護するための休業というより、介護の態勢を整えるための休業、という意味合いがあります。

介護をするには、ケアマネージャーと面談する、利用する介護サービスについて検討する、施設に入所するために施設を探す、選ぶなど、最初の手続きが必要ですし、実際に利用をはじめて本人の反応をみる、必要に応じてサービスの変更を検討する、といった手直しも必要です。そうしたことのために、介護休業を使う、というわけです。

介護休業は、1年以上勤務している(雇用保険に加入している)などの条件を満たせば利用できます。

自身の父母だけでなく、配偶者(事実婚を含む)や配偶者の父母などに介護が必要になるケースもありますが、そのいずれも対象になりますし、兄弟姉妹や孫が要介護になった場合も、介護休業を取得できます。ただし、祖父母、兄弟姉妹、孫については、同居かつ扶養していることが条件です。

年間5日の「介護休暇」や勤務時間の調整も可能

月に1度の通院に付き添いたい、毎月のケアマネージャーとの面談に同席したい、といった場合に助かるのが、「介護休暇」です。これは1年に5日まで、半日単位でも取得できます。

そのほか、育児・介護休業法では、①所定労働時間の短縮、②フレックスタイム、③始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、④介護サービス費用の助成、といったメニューがあり、雇用主はいずれか1つを会社の制度として定めることが義務付けられています。さらに介護が終わるまで、希望すれば残業が免除される制度も新設されています。自宅介護をしていて、日中はデイサービスや訪問介護のサービスを利用する、といったケースでは、残業がないことはかなり安心できると思います。

介護でキャリアに傷がつく心配を払拭

キャリア志向の女性にとっては、介護が昇進などに影響しないかも気になりますが、育児・介護休業法では、そうした点のフォローも考えられています。

介護休業や介護休暇を取得したり、時短などを選択したりした場合でも、解雇や降格、不利益な配置変更、減給、不利益な評価など、不利益な取り扱いをすることを違法としているのです。

事業主に対し、「上司や同僚などが職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為をすることがないよう防止措置を講じなければならない」、という防止措置義務も定められています。

介護の必要が生じた場合はもちろんですが、働く女性として、リーダーや管理職の役割を担っている人は、こうした制度や義務があることをしっかり把握しておくことが求められます。

介護休業中、賃金の67%か80%は確保できる

お金についても支援があります。介護休業を取得した場合は、雇用保険から「介護休業給付金」が給付されます。

金額は「賃金(日額)×休業日数(最大93日)×67%」で計算されます。ただし勤務先から賃金が13%超支払われる場合は賃金の80%相当額と、支払われる賃金との差額が支給される額となります。さらに賃金の80%以上が支払われる場合は、給付金の支給はありません。

介護給付金は、介護休業を開始した日の前2年間に、12カ月以上雇用保険に加入していること、1年以上雇用が継続していることが条件ですから、1年以上勤務している会社員ならほとんどが対象になります。パート勤務の人でも条件を満たす場合がありますから、勤務先に確認してみましょう。

なお、育児休業では厚生年金や健康保険の保険料免除がありますが、介護休業についてそれらの免除はありません。

ここでポイントになるのが、誰が介護休業するか、です。例えば夫が会社員、妻は雇用保険に加入していない自営業、といったカップルの場合、妻は介護給付金が受けられません。それなら、介護休業が取得でき、介護休業給付金の給付が受けられる会社員の夫が休業した方が、経済的にメリットが大きい可能性もあるのです。

介護離職はお金の面でも避けたい

介護給付金があるとはいえ、収入が減るのは好ましくありません。しかし、ここで知っておいてほしいのは、「介護離職をするよりは、間違いなく家計への影響は抑えられる」ということです。

介護離職すれば収入がなくなりますし、厚生年金から国民年金に移行して将来の年金が少なくなるといった影響も生じます。シングルの人が介護離職した場合、親の年金で生活できたとしても、親が亡くなれば年金の支給もなくなります。もちろん、再就職することは可能だと思いますが、できれば、仕事を続けながら、介護を両立させる方法を考えるのが望ましいと言えます。

仕事は続けてサービスにお金を払うという選択肢も

とはいえ、誰かが介護にあたらなければ……、と思い詰めてしまいがちですし、自分がみてあげたいと考える人もいるでしょう。

まずは落ち着いて、公的介護保険のサービスの利用を検討しましょう。受けられるサービスの内容や限度額は要介護度によって異なりますが、限度内であれば自己負担は所得により13割です。限度額内では足りないという場合には、全額自己負担のサービスもあります。

費用は介護を必要とする本人が負担するのが原則ですが、親では負担しきれない場合、子が無理をして負担する、負担できないから介護離職して介護する、というのは避けたいところです。

介護休業をしてケアマネージャーや兄弟姉妹で話し合う、近くに住む親せきや近所の人にも力を借りるなど、あらゆる方法を考えましょう。サービスの利用料を負担しても、長い目で考えると、介護離職をするよりは合理的な選択になる可能性が高いと考えられます。

家族が遠くで暮らしている場合は仕事を辞めざるを得ないと思いがちですが、どんな方法があるか、家族が元気なうちに話し合っておくことが大切です。東京で働いていた人が、地方で暮らすご両親の介護が必要になり、地方で仕事をみつけて転職した、という例もあります。ご自身の場合はどんな方法があるか、事前に考えてみましょう。

休業できる、休業しても不利益にならないように定められている、給付もあるなど、ここまで法律で定められているのは、介護離職する人を減らしたい、というメッセージです。まずは利用できる制度を知って、少し休業して、落ち着いて考えてくださいね。


井戸 美枝

ファイナンシャルプランナー

経済エッセイスト。関西大学卒業。厚生労働省社会保障審議会企業年金、個人年金部会委員。大図解 届け出だけでもらえるお金』など著書多数。

 

 

アナザーノート 高齢ニッポンの行方を複眼的にとらえる

朝日新聞(浜田陽太郎)

2020.9.6

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こんにちは。浜田陽太郎と申します。ここ20年ほど、社会保障を中心に取材してきました。「大事だけど、よくわからない」と思われがちなテーマかもしれませんが、くらしと政治の距離を縮めて「わかりやすさ」を追求したいと思います。

 

酷暑の東京の片隅で

 

 それにしても、8月は暑かったですよね。エアコンなしの生活はもう考えられなくなったと思いませんか? 

 

 こんな質問をするのは、最近の経験をご紹介したかったからです。

 

 猛暑日の8月中旬。私は都内のある男性のアパートを訪ねました。仮にAさんとしておきましょう。

 

 マスクをしてその部屋にいるだけで、汗がどんどん出てきました。エアコンが動いていないからです。

 

 70歳代のAさんは独り暮らしで、身寄りはなく、最近、生活保護を受け始めました。

 

私は、新聞社に勤めるかたわら、地元の社会福祉協議会(社協)に「生活支援員」として登録しています。独り暮らしのお年寄りの金銭管理などをお手伝いする国の制度があり、その最末端で月に12度、活動しています。

 

 新たに担当するAさんと会ったのは、この日が初めて。6畳一間と小さなキッチンという間取りの部屋は、窓から生ぬるい風が入ってはくるものの、やはり暑い。エアコンはあるのですが、表面が茶色に変色し、見るからに古く、Aさんは使っていないとのこと。

 

 テレビでは連日、熱中症で救急搬送されたり、亡くなったりするお年寄りのニュースが流れていました。

 

 さあ、どうしよう……。

 

新たにエアコンは買えるのか

 

 Aさんに、貯金はありません。もしエアコンが壊れていた場合、どうすればいいのか。厚生労働省や知り合いのケースワーカーに取材してみました。

 

 まず、現状では、様々な条件がつきますが何とかなりそうです。

 

 生活保護費は、少なくとも最低生活費として必要なものはすべて含まれており、エアコンの費用も月々の支給額に「薄く溶け込んでいる」というのが厚労省の説明です。なので、もし生活保護をすでに受けている人が、エアコンを買い替えるなら、保護費から少しずつ貯金して資金をつくらないといけません。

 

 ただし、保護が始まったばかりで持ち合わせがない人に、日々の生活費などとは別に、電化製品を買うためのお金を原則1回だけ、29600円(「真にやむをえない事情」があれば47100円)を上限に支給することが認められています。普通は、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器の「3点セット」のどれかを購入し、リサイクルショップもよく利用するそうです。

 

 そこに加えて、「冷房器具」という項目が設けられたのは2018年でした。「熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合」と条件がついていて、こちらの上限は51千円です。この金額は毎年改定され、今年10月からは53千円になるそうです。

 

 都心部の家電量販店で聞いてみたら、「冷房機能だけの機種」なら、工事費込みで53千円くらいからあるとのことでした。

 

 ちなみに、カネ(金銭)ではなく、役所の側が手配してモノ(現物)を渡すというのが原則です。

 

「クーラーは外して処分」の時代も

 

 実はかつて、生活保護を受けている人は、そもそもエアコンを持てませんでした。1994年には、埼玉県桶川市で「クーラー事件」と呼ばれる出来事がありました。

 

 生活保護を受け始めた79歳のお年寄りが「クーラー所有は認められない」という市の指示で、前から持っていた器具を取り外して、市内の電器店で15千円の炊飯器と交換してもらいました。しかし、その年の夏は猛暑。このお年寄りは脱水症状を起こして約40日間入院。市議会、そして国会でも取り上げられ、政治問題になりました。

 

 批判にさらされた市側の釈明はこうでした。国の通達で、生活保護家庭の持ち物は「当該地域の一般家庭との均衡を失することにならない」ものに限られる。判断基準は「普及率70%」で、桶川市のクーラー普及率は約70%だった。そこで取り外しを指示した――。

 

 ん? 普及率7割なら認めたらいいじゃないか、と思いますよね。でも、当時の国会議事録をみると、普及率がもっと高くても認めない自治体が多くあったようで、西山登紀子参院議員(当時、共産党)の質問に対して厚生省(当時)は「趣旨が徹底していなかった」と答弁しています。

 

 ところで、この「普及率7割」という数字は、生活保護の世帯が持つことを認められるものに関し、「一般世帯との均衡」をはかる基準として今も生きています。世間から「ぜいたくしている」と見られるかどうか、という線引きなのです。

 

移ろいやすい「世間」と政治

 

 「クーラー事件」の翌年には、もともと持っていれば「ルームエアコンの保有は認めてよい」となり、さらに2018年には「熱中症のおそれがある場合は買うためのお金は出しましょう」となったわけです。いまエアコンの普及率は9割(2人以上の世帯)になっています。

 

 このエアコンの例でわかる通り、生活保護で何が認められ、何が認められないかという基準は時代によって変わります。そこには、世間の目や政治の動きがからみ、制度にも影響を与えてきました。

 

 政治問題化は、給付改善とは逆方向に働く場合もあります。

 

 かつて、お笑い芸人の母親が生活保護を受けていたことをきっかけに「生活保護バッシング」が起きました。12年のことです。当時、野党だった自民党は、この動きに呼応して「給付カット」を公約に掲げ政権に復帰。13年から支給額が引き下げられました。

 

 当時、論説委員としてこの問題を取材していた私にはじくじたる思いが残ります。自民党の対応はあまりにえげつないと感じましたが、ワイドショーを中心にマスメディアもバッシングをあおったからです。

 

 「働けるのに保護を受けたと聞いた」「ブランド物を身につけている」等々、視聴者や街頭の声を、裏取りもせずそのまま流すやり方について、弁護士や貧困者の支援団体らが、放送倫理・番組向上機構(BPO)に審議を要請しましたが、「編集の自由の範囲」と門前払いになりました。私も問題提起の社説を書きたいと提案しましたが、やはり「編集の自由」をしばりかねない、という強い反論が出て論説委員室内の賛同を得られませんでした。

 

 さて、心配していたAさんのエアコンは、リモコンの電池を替えたら無事に動きました。ただ、本人は使いたくないという意向が強い。なぜなのか。大丈夫なのか。こちらの方は、お金だけでは解決できません。心配は続くのです。

日経スタイル(上林由宇太、川野耀佑)

2020/8/31

今年4月から75歳以上の高齢者を対象に、要介護になる手前の状態かどうかを判断する「フレイル健診」が始まった。15項目の質問票で要介護予備軍を見つけ、個別指導や医療機関の受診につなげる。長く健康を保てば、高齢化で膨らむ社会保障費の抑制も期待できる。指導にあたる保健師らの確保などが課題だ。

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「フレイル」の早期発見に重点を置いた健康診査を受ける高齢者(7月、大阪府守口市)

「車椅子生活の妻を支える自分が要介護者になれば暮らしが立ちゆかなくなってしまう。少しでも早くリスクが見つかるなら、本当にありがたい」。730日、大阪府守口市の健康診査会場を訪れた男性(88)は、新しく導入されたフレイルの質問票を手に語った。

フレイルは「虚弱」を表す言葉で、日本老年医学会が2014年に提唱した概念だ。加齢に伴う体重の減少や筋力の低下など身体的な衰えだけでなく、認知症やうつなどの精神的な要素、引きこもりなどの社会的な要素も判断材料とする。

質問票を刷新

従来の健診の質問票は、肥満対策が中心の特定健診(メタボ健診)と同じ内容だったが、厚生労働省が75歳以上の後期高齢者に特化しフレイルの早期発見に重点を置いた内容に刷新し、4月から各地で使われ始めた。介護が必要となる前に生活習慣を見直すことで、長く健康を維持することを期待している。

質問は(1)6カ月間で23キログラム以上の体重減少があったか(2)今日が何月何日かわからない時があるか(3)家族や友人との付き合いがあるか――など身体の状態や認知機能、生活習慣に関する15項目となっている。

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回答結果は医療や介護履歴などの記録をまとめた「国保データベース」に登録。健診の結果なども活用し、フレイルの恐れがある高齢者を判断する。対象となった高齢者は自治体の保健師らが自宅を訪問し、生活指導や医療機関の受診につなげるのが主な流れだ。

フレイルの恐れがあるかどうかの判断は、自治体ごとに独自基準を定める。フレイルは身体の衰えから社会的な環境まで幅広く健康問題を捉えており、自治体がすべてに対応するのは人材や予算面から難しい。自治体に重視する項目や基準が委ねられている。

大阪府後期高齢者医療広域連合は、健康状態や運動機能などに関する項目で3つ以上のチェックを付けた人を「リスクあり」とみなす独自基準を検討している。地元の医師会との調整後、府内の自治体に参考基準として提示する方針だ。

対象者を自宅訪問する際は、管理栄養士らが摂取すべき栄養素や食品について助言する場合もある。フレイル予防には食生活も重要とされる。厚生労働省は、体格指数(BMI)が18.5未満で、過去6カ月間で23キログラム以上の体重減少があれば栄養不足に陥る可能性があるとして、支援の対象に例示している。

フレイル対策が進む自治体では効果も出ている。

神奈川県大和市は栄養不足やそのリスクのある75歳以上の高齢者をアンケートなどで把握し、戸別訪問で食生活を指導する取り組みを16年度から実施している。要介護状態や死亡する人の割合を調べたところ、戸別訪問を受けた人は受けなかった人に比べて18年度は4分の1程度の水準だったという。同市は介護給付費の抑制効果が18年度だけで約7千万円に上ると試算した。

受診率は3

全国的には後期高齢者向けの健康診査の受診率は現在、3割程度にとどまり、向上策が不可欠だ。厚生労働省は地域の高齢者が集まって交流する「通いの場」などでも質問票を活用し、フレイル対策に役立てたい考えだ。

今年は新型コロナウイルスの影響で、健診を一時休止する自治体も相次いだ。フレイルの質問票を活用した保健指導も当初の想定より遅れている。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「新型コロナの影響で外出機会が減り、家に引きこもりがちな高齢者が増えている」と指摘。「精神面や社会的孤独に焦点を当てた対策がより重要になる」と話している。

健康寿命延ばし医療費抑制

国がフレイル対策を進める背景には高齢者が増える中、介護を必要とせずに生活できる「健康寿命」を延ばし、膨らみ続ける社会保障費を抑える狙いがある。

2017年度の国民医療費は約43兆円。国の推計によると、40年度には最大約78兆円に膨らむ見通しだ。要介護認定者は3月時点で669万人で、この10年で4割ほど増えた。40年度の介護給付費は約26兆円と18年度の2.4倍に膨らむと見積もられている。健康寿命は最新の16年で男性が72.14歳、女性が74.79歳。国は40年までにそれぞれ3年以上延ばす目標を掲げている。

自治体の保健師の確保が課題だ。同省によると、保健師の就業者は1812月時点で約53千人。保健師の国家試験合格者は直近10年間で10万人を超える。保健師として働いていない人材が多いとみられる。

小規模な市町村ほど確保が難しい面もある。国は20年度、保健師らの採用を促すため人件費を補助する制度を創設した。

[日本経済新聞朝刊2020831日付]

 

SankeiBiz

2020.8.29

 新型コロナウイルスの感染再拡大で病院の収益悪化に歯止めがかからず、経営面からの医療崩壊に危機感が高まっている。新型コロナ患者への対応で、一般病床の転用や外来診療の制限を強いられるなどし、大幅な減収に直面。改善のめどが立たないまま再流行を迎えた中で、地域医療の砦(とりで)として新型コロナ以外の医療との併存にも苦悩する。

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 新型コロナ患者の専門病院として5月に始動した大阪市立十三(じゅうそう)市民病院。酸素吸入が必要な中等症患者らを受け入れてきた。

 従来約260床のベッドがあるが、新型コロナ患者の治療には通常より多くの人材を割く必要があり、90床の確保が限界だった。5月の入院患者は多い時で約20人にとどまり、月4億円前後だった診療報酬は約2千万円に減少した。

 感染が一時収束した6月には入院患者が1人の日も出るなど、さらなる空床を抱えることに。空床確保のための行政側の補助金もあるが、支援の範囲には疑問が残る。「外来診療をとめたことで生じた減収分などの補填(ほてん)もなければ経営は厳しい」(担当者)と病院側は不安を募らせる。

 7月に外来診療を再開したものの、入院患者が再び増加に転じており、難しいかじ取りも予想される。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の関係者をはじめ、80人以上の患者を受け入れてきた千葉大医学部付属病院(千葉市)も苦境に立たされている。

 当初、2病棟計92床を確保したものの、感染者と非感染者の区域を分けるため実際に稼働できたのは集中治療室(ICU)の一部のほか、2病棟で計48床。一般診療や手術の制限をせざるを得ない中で抱えた多くの空床は経営を圧迫した。

 4月はそれぞれ前年同月比約2億4千万円、5月は同約5億7千万円の減収。6月に新型コロナ対応を1病棟態勢に切り替えたが、経営回復の見通しは不透明な状況だ。補助金が実際に入るまでに時間を要するほか、減収分の補填も一部にとどまる見込みで、寄付の強化にも乗り出している。

 「4、5月の経験から、新型コロナ対応を2病棟態勢にしてしまうと一般の手術、治療に大きな影響が出る。なんとか1病棟以内を維持していきたい」。横手幸太郎病院長は切実な思いを吐露する。

 日本病院会などが実施した4~6月の経営状況に関する調査(1407病院の回答分)では、新型コロナ患者の受け入れや受け入れ準備を行った病院の約8割が赤字を計上。受け入れていない病院でも約5~6割が赤字となった。

 夏のボーナス(賞与・一時金)を減額支給せざるを得ない状況に追い込まれていることも判明。回答のあった1459病院のうち「満額」71・3%、「減額」27・2%で、「支給なし」も0・8%あった。

 同会の相沢孝夫会長は、「3カ月連続の大幅なマイナスで、これまで行ってきた一般医療の継続すら困難となる状況に直面している」と説明。「このまま手をこまねいていたのでは、医療提供体制が崩壊する。早急な経営支援をお願いしたい」と訴える。

 

シルバー産業新聞

2020820

熊本県の特養で14人犠牲

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7月3日から続いた豪雨が日本各地を襲い、全国で死者82人、行方不明者4人、全半壊895棟など甚大な被害になった。熊本県では、特養「千寿園」(球磨村)で想定を上回る球磨川の増水により14人が亡くなるなど、全県で65人が死亡した。高齢者施設の被災では全国99カ所(厚労省の調べ)に及んでいる。

 

 7月3日以降に発生した集中豪雨により、日本各地で被害が発生した。最も被害が大きかった熊本県で34施設が被災した他▽福岡県45施設▽長崎県11施設▽大分県6施設▽長野県2施設▽岐阜県1施設――の合計99施設が被災した(表)。

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 全国老人福祉施設協議会(平石朗会長)は7月9日に熊本県老施協(跡部尚子会長)の要請を受け、職員が出勤できない熊本県内の介護施設に対して全国老施協DWAT(災害派遣福祉チーム)の派遣を行った。全国老施協では、他県からの派遣は行わず、熊本県内のDWATが対応した。

 

 13日に特養「アゼリア」(人吉市)にDWAT第1班3人を派遣。そのほか、同市内の特養「聖心ホーム」と「龍生園」に県内8チーム21人が派遣された。

 この他、マスクや手先消毒液、ウエットティッシュ・タオルなどの支援物資の提供も行われた。

 

 熊本県介護支援専門員協会(土屋政伸会長)は、保健師と日本赤十字病院の医者らのD-MAT(災害派遣医療チーム)の3者で被災支援にあたり、保健師の被災地域の全戸訪問などを手助けした。

 

 今回新型コロナ感染予防の観点から日本介護支援専門員協会でも人員派遣を見送った。

 

 「甚大な被害があった球磨村の地域包括支援センターに、ケアマネジャーがバックアップに入り、認定審査や認定調査、暫定プランの作成などを支援し、サービスが可能な介護事業所を探して、つないだ」と土屋会長。被災の千寿園では、水害の避難訓練を何度も実施してきたが、今回は間に合わなかったと言う。復旧には相当時間を要すると予想し、早めに手を打つ必要があると話している。

 

 「担当する芦北町や人吉市など球磨川の氾濫した地域では、浸水や家屋損壊などで被災した利用者宅は25件あった」と、福祉用具レンタルのミタカ熊本南営業所の畠山寛人さん。用具の引き上げの要請が相ついだ。「水に浸かった自宅に住み続けることが難しく、病院、ショートステイ、親戚宅などへ避難している。自宅とは環境が変わることで状態の悪化が懸念される」と話す。

 

防災士取得など、 災害時に早期対応できる人材育成

 昨年10月に日本の広い範囲で被害をもたらした台風19号。山形市にある特養「ながまち荘」では付近を流れる馬見ヶ崎川(まみがさきがわ)が氾濫する恐れがあった。

 

 峯田幸悦施設長は当時のインタビューで「河川の氾濫は地震と異なり、水位を見て今後が予測できる。しかし『いつ氾濫し、いつ逃げるか』の判断が難しく、避難が遅れるケースもある」と話していた。

 

 避難方法についても、複数階ある施設ならば上の階へ逃げる「垂直避難」、平屋建ての場合は近隣の建物や水が届かない地域へ移動する「水平避難」が必要となり、かかる時間や労力も異なる。

 

 同施設は平屋建てで、河川が氾濫した場合、500m離れた病院へ避難する予定だった。全入所者を避難させる場合は数時間かかるため、車を6台用意するなどの準備を行っていた。

 

 スピードが命となる災害対応の現場では、瞬時に状況を判断して、的確な指示を出せるリーダーの存在が重要となる。

 

 そこで同施設では、介護職員に防災士の取得を推進。30人以上が防災士の資格を持ち、地域の介護施設や医療機関のほか、行政や消防団との連携も強化している。

(シルバー産業新聞2020年8月10日号)

 

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