都農町で始まった高齢者主役の「デジタル・フレンドリー計画」


JBpress(
中川 敬文)

2020.9.16

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                                   孫世代の20代が80代にタブレットの楽しみ方を伝える

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、宮崎県都農町ではデジタル技術を地域づくりに活用する「デジタル・フレンドリー」を宣言。

 町内の通信環境を整備し、町民向けに行政との双方向型ポータルサイトを開設し、コミュニケーションの推進を図っています。

デジタルと仲良く、多世代と仲良く

 僕らが「デジタル・フレンドリー」と名づけた背景には、デジタルという言葉が、高齢者にとっては難しくて分からないものという印象が根強いものとの認識がありました。

 デジタルと仲良くなることでもっと暮らしが楽しくなり、デジタルを通して孫世代をはじめとする若者と仲良くなれる、そんな想いを込めてフレンドリーという言葉を強調しています。

「デジタル・フレンドリー」計画の具体的な特徴としては、最もデジタル機器を活用してほしい高齢者に、タブレットを配布して終わりにならないよう、地域の青年団体が利用を個別にサポートしていくことで、多世代交流や孤立防止・健康維持につなげていくことにあります。

 この仕組みは、デンマークが実践している地域の若者による高齢者の家庭訪問を参考にしました。

 デンマークでは、貧しい地域の若者が、仕事として地域の高齢者の家庭を訪問し、タブレットやスマートフォンの使い方を教えています。

 行政と民間の間に位置づけられる組織「デンマークデザインセンター」が推進しています。

 都農町では、ふるさと納税を原資に、昨年5月、来たるべく人口減少・少子高齢化を見据え、よりスピーディーにまちづくりを推進するために一般財団法人つの未来まちづくり推進機構(以下「財団」)を設立しました。

 今回のデジタル・フレンドリー計画は、財団が都農町からの委託を受け、推進主体となっています。

これから約半年で、町内全世帯でワイファイがつながる環境を整備、町のホームページリニューアルと合わせて、町民のIDを蓄積してデータ活用できる双方向型のポータルサイトを開発します。

 高齢者世帯には、このポータルサイトをインストール済みのタブレットを配布し、個別に訪問して使い方を学んでもらう予定です。

 実際に、高齢者夫婦、単身高齢者の世帯数は約1200世帯なので、個別フォローは現実的な規模かと思います。

 高齢者世代にとって、息子、娘世代だと若干抵抗感があったり、教えられたくないなどの心情もあり得ますが、孫世代になれば、多くの場合、喜んで孫のいうことを聞くのではないでしょうか。

 若者世代にとっては、決してボランティアではなく、町から正規の報酬を受け取れることが重要です。

 また教えるからには、最新のデジタル知識やトレンドについて定期的に講習を受けられ、自らのICTリテラシーを高める結果になる、ということもメリットになります。

高齢者ヒアリングで分かった阻害要因

 先週、対象となる高齢世代を訪問、実際にタブレットを持参し、タブレットやスマホを使う阻害要因が何か、何があれば見たくなるか、どうすれば使いやすくなるか、などについて2時間近いヒアリングを実施しました。

 共通して出た意見としては、「デジタルが便利なのは分かる、でも使い方が分からないし、一度聞いても覚えられず、すぐ忘れて結局面倒臭くて使わなくなる」というものでした。

 高齢者世帯の日常にデジタルが溶け込んでいくためには、まず慣れること、そして、日常使っているものの代替として便利さを実感すること、最後に、自分の趣味や孫の映像など楽しくなるものを見つけることという3段階が必要だと感じました。

①まず慣れること

 1回説明に来て終わりではなく、定期的に訪問、利用している人はLINEでのサポートなどフォローが必要。

 一人ひとりにしっかり向き合うことで、その人に合った、慣れやすいやり方を一緒に見つけていくことが必要です。

②日常使ってるものの代替となること

 毎日読む新聞は、広げなくていい、字を簡単に大きくできる、新聞紙がたまらず捨てるのに疲れなくて済みます。

 カレンダーも多くの高齢者世帯ではリビングの壁に掛かっていますが、デジタルになると、離れて住む家族からも予定を入力してもらえて孫の予定も知ることができます。

 テレビや新聞の天気予報では範囲が宮崎、延岡と大括りですが、デジタルなら範囲が都農町に特定され、予報の精度が高くなります。

 タブレットを使うと日常の暮らしがこんなに便利になるのか、と実感できれば、自然と生活に溶け込んでいくのではないかと思います。

③趣味や孫の映像など楽しくなること

 高齢者の方々と話していて一番盛り上がったのが趣味の話。

「何だったら見ますか?」と聞いて真っ先に答えが出てきたのは「孫の映像」。そして「趣味の情報」でした。

 囲碁や将棋が好きな人はオンラインの対局、お城好きには全国の城巡り、料理好きには動画による料理教室、ほかにも音楽、運動など、タブレット越しに趣味の世界に入ることを体験すると、より楽しく、豊かな暮らしに貢献できると思います。

安心できるサポート体制

 高齢者の方々は日が経つと忘れてしまうことも多いので、現段階から3つのサポート体制を整備します。

 1つ目は定期的な訪問です。

 今回、モデルケースで4人の高齢者を訪問して改めて感じたことは、すごく単純で、若い人と話すことは楽しい、ということです。

 自分の孫以外で、若い世代と話す機会は滅多にないものです。

 若い世代にとっても、ただ高齢者世代から話を聞くのはよほど関心がない限りはあまり気が進まないものかもしれません。

 ただし、若い世代が教える、という立場であれば、その流れで、地域の歴史や文化について徒然なるままに話を聞くのは有意義なことではないかと思います。

 2つ目はLINEや電話でのサポートです。困った時にすぐに相談できることも大事です。

 僕らが接している高齢者の方々では、家族とのコミュニケーションでLINEを使っている人は一定数いるため、LINEによるチャットボットサービスは充実させていく予定です。

 3つ目は現在、リノベーション中の財団の新しいオフィスにおけるヘルプデスクサービスです。

 カフェコーナーを併設することで、お茶を飲みに来る気軽な感じで、常駐している財団スタッフと相談できる場づくりを進めています。

使われることを最重要視する

 都農町の「デジタル・フレンドリー」計画は始まったばかりですが、最も大切なことは、実際に高齢者を中心にデジタル機器が使われることです。

 先日の台風10号で、幸いなことに都農町では大きな被害は出ませんでした。

 しかし、テレビのニュースや防災ラジオよりも、インターネット上のアプリの方がより都農町にフォーカスして、リアルタイムに情報を取得できたことは町民の実感値としても大きかったと思います。

 現時点で40%近い高齢化率の都農町にとって、全町民がデジタル機器を活用できるようになることが、自然災害や少子高齢化、人口減少を克服する一番の近道なのではないかと思います。

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                                 デジタルが若者と高齢者の架け橋に


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