SankeiBiz
2020.9.15


 中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」において、「デジタル一帯一路」(デジタル・シルクロードとも言われている)の推進が、ここにきてにわかに注目を集めている。対象国に、港湾や道路などのインフラ建設を行うだけでなく、第5世代(5G)移動通信システムネットワークを構築し、電子商取引(EC)などのネット・サービスで中国主導のデジタル化経済を確立するという戦略である。

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                                 ※画像はイメージです(Getty Images


 もともと「一帯一路」には、港湾や道路などのインフラ整備とその周辺の都市・工業団地づくりを一体化して進めていくところに、他にはない特徴があった。対象国、とりわけ開発途上国からしてみれば、世銀融資や日本の政府開発援助(ODA)融資に比べると、金利は高いものの、財政均衡といった厳しい条件は求められないし、何よりも都市や工業団地まで建設してくれるというのは、ありがたい話だった。こうして「一帯一路」は一気に拡大していった。

 港湾や道路などのインフラ整備では、国有企業、中でも中央企業(中央政府の管理監督を受ける企業)が中心となる。例えば港湾建設では、国家開発銀行が資金を供給し、中央企業の招商局や中国遠洋海運集団有限公司(コスコ)が建設面を担当するといったやり方である。

 一方、街づくりや工業団地建設では、民営企業が活躍の場を与えられる。そのフロントランナーとなっているのが、華為技術(ファーウェイ)である。多くの「一帯一路」沿線国に、5Gを中心とした最先端の通信設備を輸出して、同社の新しい稼ぎ頭となっている。

 「一帯一路」がスタートした当初、ファーウェイはさほど注目されていなかった。ファーウェイ側も中央政府があれこれ介入してくるのを嫌って、むしろ遠ざけていたほどだ。ところが5Gの開発が進み、街づくりや工業団地建設の中核的な技術となるに及んで、ファーウェイと政府の歩調が合ってきた。

 米国がファーウェイの5G開発にとりわけ神経をとがらせているのも、「一帯一路」沿線国に5G通信ネットワークが普及し、これら地域の「デジタル覇権」を握ってしまいかねないからであろう。

 問題は沿線国がどう考えているか、である。中国に通信ネットワークを完全に握られてしまう危険性をどこまで認知しているか。目先の利益だけに目を奪われて、後で後悔するようでは遅すぎる。