連載「お魚ビッくらポン」

AERAdot.(岡本浩之)

2020.9.9

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                                   さんま(出典:WEB魚図鑑)

 

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                                 さんまの握り寿司

 

 日中の最高気温もようやく35度を下回り始め、夜もエアコンなしでもなんとか眠れるようになってきましたね。これから少しずつ秋っぽくなってくるのを期待したいものです。

 秋を代表する魚といえば、「秋刀魚」とも書く「さんま」ですよね。秋を代表する魚なら「鰍」と書けばいいように思いますが、この漢字は「かじか」という別の魚に当てられています。

 さんまは江戸時代には人々に知られてはいましたが、脂が多すぎてあまり人気がなく、形が似ている「サヨリ」にあやかって、「オキサヨリ」などと呼ばれたり、脂をあんどんを灯すのに使ったりする程度の魚だったので、学者もわざわざ漢字を考えることをしなかったと言われています。

 ではなぜ「かじか」に「鰍」を当てたのかですが、「鰍」は中国では「ドジョウ」のことで、「かじか」の見た目がドジョウに似ていたからという説が有力なようです。

 余談になりますが、魚へんに春と書くと「さわら」、魚へんに冬と書くと「このしろ」です。では、魚へんに夏と書く魚は何かわかりますか?

 実は「そんな漢字は存在しない」が正解なんです。

 ブリの幼魚である「わかし」にこの漢字を当てることがありますが、皆さんのスマホやパソコンで、「わかし」と入力しても、魚へんに夏の漢字が出てくることはないと思います。

 江戸時代には人気がなかったさんまですが、最近の調査によると、我々日本人が好きな魚は、「サーモン」「まぐろ」「さんま」「あじ」「さば」がどの調査でも不動のベスト5とのことです。

 鯛やハマチ(ブリ)が入っていなくて、さんまが入っているのはちょっと意外ですよね。

 さんまが人気の理由は、「脂が乗った身の甘さ」「他の魚に比べて柔らかい身質」そして「うろこや内臓を取り除くことなくそのまま焼いて食べられる手軽さ」とのことです。確かに、脂のよく乗ったさんまの塩焼きを食べると、日本人に生まれた幸せを感じます。

 皆さんもよくご存じの通り、そのさんまが近年は不漁で大変なことになっています。

 さんまは、北太平洋の温帯から亜寒帯に広く生息していて、8月ごろに千島あたりにいったん集まって、産卵のために日本列島に沿って群れで南下していきます。ちょうど北海道から三陸沖あたりにまで南下したものが、脂のノリも良く、塩焼きには最高のものと言われています。

 そして紀伊半島あたりまで来ると、すでに産卵を終えて脂も落ちてしまっているんですが、これらは、塩焼きではなく、丸干しにすると美味しいとのことで、三重や和歌山ではさんまの丸干しが有名です。

 毎年8月中旬から北海道や東北地方の太平洋岸で本格的な漁が始まるんですが、昨年は前年の約3分の14517トンしか取れませんでした。

 今年はさらに深刻な不漁で、8月末には一匹1500円という信じられない価格で取引されていました。最近では400円程度にまで下がってきているようですが、それでも通常の年の何倍もの高値です。

 近年のさんまの不漁の原因については、温暖化の影響でさんまが南下するルートが変わったとか、日本近海に来る前に中国や台湾の漁船が根こそぎとってしまうからなどさまざまな説が言われていますが、まだ本当のところはわかっていません。

 中には、さんまは昔から豊漁と不漁を定期的に繰り返してきたので、たまたま近年が不漁期に当たっているだけで、そのうちに元に戻るという楽観論を唱える方もいます。

 とはいえ、現在の不漁が来年も続くと、冷凍して保管してあるさんまも底をついてきて、気軽に食べることができなくなってしまいます。このままでは、うなぎに続いてさんまも気軽に食卓に上る庶民の味ではなくなってしまうかもしれません。

 くら寿司でも、この時期に合わせて、さんまのお寿司を販売していますが、今年はさんまの異常価格が報じられた影響なのか、例年以上に人気が高く、予定より早く終売となってしまいそうです。気になる方は、お早めにお越し下さい。

○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962
年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、201812月から「くら寿司株式会社」広報担当、201911月から、執行役員 広報宣伝IR本部 本部長

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