TRiP EDiTOR(坂本正敬)

2020/08/23

海外旅行中に日本語が通じる現地の人と出会うと、やはり心強いものです。初めて会った人であっても日本語で話せた瞬間、昔から友だちのような感覚にもなれます。

しかしながら、日本語を話す人の数は、英語や中国語、ヒンディー語と比べて、地球上でそれほど多いとはいえません。

もちろん、旅行の際には現地の言葉や文化を事前に学ぶ姿勢が大切です。でも、普段使わない言語に囲まれていると緊張が続くもの。だからこそ日本語を話す人と海外で出会ったときの喜びは、ひとしおなのです。

そこで今回は各種のデータと海外を渡り歩いてきた筆者の実体験を交えて、日本語が通じる人と出会う可能性が高い国をまとめてみました。

20208月現在は新型コロナウイルスの影響で海外旅行が叶わない状況ですが、コロナ収束後に海外旅行先を選ぶ際の、ひとつの判断にしてみてくださいね。

マレーシア

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ある取材でマレーシア政府観光局のイベントに参加したとき、イベント後の食事会で、地位のある年配のマレーシア人が日本語で話しかけてくれたのです。

そのイベントに参加している日本人は筆者だけだったため、英語でお互いに自己紹介を済ませると、みなさん何か言いたそうな顔をしていました。笑顔で問いかけると、単語メインではありますが日本語で少しずつ話し出してくれてびっくり!という瞬間が何度もあったのです。

聞けば、マレーシアで現在高い地位を占めている年配の方々が若いころは、日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと世界でいわれていたくらい、日本経済が絶好調だった時代だったといいます。

そのころマレーシアでは「遠い欧米よりも日本を見習え」と、将来有望な若者の多くが日本の大学へ留学をしたそうです。

筆者に声をかけてきくれた人たちも、国の観光業を引っ張る立場の方々ばかり。若いころに大学留学で学んだ日本語をまだ覚えていて、わざわざ日本語で話しかけてくれたのです。

先ほどの「2018年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)」を見ても、マレーシアには4万人ほの日本語学習者(義務教育の学校や語学学校で学習する人)がいるそう。

この数は、日本語教育を行っている142カ国のなかで10。しかも2015年版の調査と比べて18%も伸びています。

マレーシアの人口は3,200万人ほど。これだと800人に1人ほどの計算になってしまうので、現実には通じるという印象をそこかしこで体感できるわけではありません。

しかし現在日本語を学んでいる世代と、若いころ盛んに日本へ留学をした世代を合わせると、もう少し通じる人の割合も増えるかもしれませんね。

インドネシア


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インドネシアのなかでも国際的な観光地のバリでは、日本語が比較的通じるなと感じます。大きなホテル、お土産屋さん、タクシードライバーなど、観光関連の仕事をしている人は日本語に限らず外国語がとても上手です。

2018年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)」を調べると、海外で日本語を学校や語学学校で習っている人の多い国は、中国に次いでインドネシアが世界第2。なんと70万人近くの人が日本語を習っているのだとか。

インドネシアの人口は26千万人と多いため371人に1人という割合になってしまいますが、日本人が盛んに訪れるバリなど国際的な観光地には、日本語を知る人も集まっている印象がありますね。

ちなみに最近、インドネシアからの留学生を受け入れる企業のお手伝いをしました。その留学生は現地の名門大学出身で、将来有望な青年です。その人に聞くと、インドネシア人にとって日本はいまでも、魅力的な留学先のひとつに見えるそうです。

一時期マレーシアからの留学が増えていた話のように、留学先として日本を目指したくなる国づくりを続けていけば日本に集まる外国人の方々が増え、その先には日本語でコミュニケーションが取れるシーンが増えるかもしれません。

台湾

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新日といわれる台湾ですが、日本が植民地として占領していた悲しい過去があります。

日本は1895(明治28)年に台湾総督府を置き、日本語を使うように現地の人に強制しました。その歴史は第二次世界大戦の敗戦、1945(昭和20)年まで続きます。

この時代を生き抜いた年配の人であれば日本語が通じることが多いのですが、実は現代の若い世代にも通じやすい印象があります。

というのも、日本の文化に詳しいので通じる単語が多いのです。「かわいい」などの言葉を若い世代はよく知っています。

特に筆者が知る台湾人は、ジャーナリストなど海外への関心が高い人が多いというせいもあるのかもしれませんが、日本の地名を驚くほど知っています。

国際交流基金が2019(令和元)年10月に発表した「2018年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)」(PDF)によると、台湾で日本語を学んでいる学習者(義務教育の学校や語学学校で学ぶ人)の数は17万人ほど存在しているといいます。

この数字は義務教育の学校と語学学校で日本語の授業を行っている世界の142カ国のなかで7。台湾人の人口は2,300万人ほどですから、135人に1人の割合で、日本語学習者に出会う可能性があるのです。

この数に、日本の文化や地名を単語レベルで知っている人、頻繁に日本に旅行に来てくれる人、さらに日本語ができる高齢者を加えると、日本語が少しでも通じる人の数は増えるはずです。

例えば、都心部の人の集まる空港や駅で困ったときに日本語で助けを求めれば、誰か1人くらいは日本語で応えてくれるかも…というレベルといえそうですね。

中国

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中国の人と日本人は長い歴史を共有し、しかも漢字という同じ文字を共有する国民同士でもあります。

近年SNSでも“中国語っぽさ”をイメージして漢字のみでコミュニケーションを取る「偽中国語(ニセ中国語)」が日本国内で流行りました。しかもこの偽中国語、実際にに中国の人に見せてみると、なんとなく察して伝わる場合がある…というのも面白いものです。

筆者の個人的な感覚として、中国の人とは筆談もできる上に似たような音の言葉も多いので、ある意味「日本語」で何とかコミュニケーションできるという印象があります。

ちなみに、取材先で出会う中国人ジャーナリストたちに限っての話かもしれませんが、彼らは日本の文化や暮らしに驚くほど詳しいです。Nikonのカメラを使う筆者に対して「なぜ富士フイルムじゃないのか(色彩の鮮やかさが違うため)」と突っ込んできますし、「日本車が世界で最高だ」ともいってくれます。

時計もカシオのG-SHOCKを愛用し、CHAGE and ASKAを歌い、日本のアニメに関しては筆者以上に詳しい人が多いのです。

中国の人口は14億人ほど。「2018年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)」によれば、学校や語学学校で日本語を習っている人の数は100万人ほど。日本語を習っている人は140人に1人という程度なので、現実には通じない人の方が圧倒的に多いです。

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日本語の通じない中国人とのコミュニケーションにおける醍醐味(だいごみ)は、やはり筆談とお互いの発音の違い比べ

仮にお互いが英語を使えなかったとしても、漢字を持つ国同士のため紙とペンを用意すれば筆談ができ、お互いすぐに仲良しになれます。

また日本流の読み方と中国流の読み方が似ていたり、逆に全く違っていたりするため、共通点や相違点にお互い驚き合えて楽しい時間を過ごせますよ。

政治的、外国的には難しい局面が続いていますが、近い文化を持ち、お互いに理解し合える土壌を持っているはずの中国と日本。

せっかく海を挟んで長い歴史を共有しているのですから、どこかで中国の人と出会ったら積極的にコミュニケーションをとって、筆談にもチャレンジしてみると面白いかもしれません。

オーストラリア


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東アジアを除くと、日本語はやはりオーストラリアの人に通じる場面が多いなという印象があります。

筆者も現地日本語学校の授業に特別に参加させてもらい、書道をする子どもたちの様子を見た経験もありますし、現地で日本人と日本語で話しながら歩いていた際に、オーストラリア人の年配女性から日本語で「日本から来たのですか?」と話しかけてもらった経験もあります。

2018年度海外日本語教育機関調査結果(速報値)」によると、オーストラリアの学校や学校外で日本語を習っている人の数は40万人。オーストラリアの人口はおよそ2,400万人ですから、60人に1人が学校で日本語を習っているという計算です。

台湾では135人に1人、マレーシアでは800人に1人、中国では140人に1人ですから、突出して多い印象があります。

さらにオーストラリアには、日本の文化を好んでくれる人も多い印象があります。例えば、雪質の良い「JAPOWJAPAN+SNOWの造語)」を求め、北海道のニセコや長野の白馬などに繰り返し旅行に来ている人も少なくありません。

また本場ドイツを抑え、「アサヒスーパードライ」が世界で最もおいしいビールだと認めてくれるオーストラリア人も数人いました。