行動面接で判断するには限界がある

ハーバード・ビジネス・レビュー(アレックス・ハイマン :レス・アノイングCRM共同経営者兼ビジネス開発部門責任者 

2020.8.25

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            Laurence Dutton/Getty Images


優れた能力を有することはもちろん、自社のカルチャーにも適応できる人材を、どうすれば採用できるのか。多くの企業が、候補者の過去の行動を判断基準とする行動面接を実施しているが、それは経歴に関するストーリーテリングの能力を測れるだけで、批判的思考や対人関係スキルを把握することはできない。本稿では、適材適所の人材を見つけるための
4つのアプローチを示す。


 CRMソフトウェアの開発を手掛ける私たちの会社では、社員を採用し始めてほどなく、気づいたことがあった。従来型の採用面接のプロセスには、控えめに言っても欠陥があるとわかったのだ。

 私たちは当時、社員を6人から18人に増やしたいと考えていた。採用活動における目標は、企業文化に貢献できて、質の高い仕事を行い、長く会社に在籍してくれる優秀な人物を採用することだった。

 私たちはこのとき、社員の離職率を抑えたいという考えの下、時代遅れの行動面接(採用候補者の過去の行動を答えさせる質問をする)に頼るのをやめて、面接プロセスの最適化を目指すことにした。

 採用面接での古典的な問いと言えば、たとえば「あなたの最大の強みと弱みを教えてください」「仕事で試練を乗り越えたときの話を聞かせてください」といったものだろう。

 いまでも、このような面接を行っている企業が少なくない。それは、その企業の人たちも同じような質問をされた経験があるからにすぎない。一般的に採用されている面接方法は、世代間で受け継がれてきた伝統と言ってもよい。しかし、私たちが手痛い失敗を通じて思い知らされたように、このやり方では正しい評価ができない

 行動面接は、みずからの経歴に関する情報を伝える能力をテストするうえでは有効かもしれない。だが、ストーリーテリングやそれと類似のスキルが必要とされる職の採用活動でない限り、この方法によっては、採用候補者の能力に関して十分な情報を得られない場合が多い。

 私はチームの面々とともに、これまで5年間、この問題を解決しようと努力してきた。自分たちの経験と最新の研究結果をもとに、試行錯誤を重ねながら新しい採用面接プロセスをつくっていったのだ。

 そうやって編み出した手法は、求職者を旧来型の面接とはまったく異なる状況に放り込み、批判的思考(クリティカル・シンキング)の能力、テクノロジーの知識、対人関係スキルを把握するというものである。

 この方法を導入して以来、採用される社員の質が高まり、社員の会社への貢献も大きくなった。社員の定着率も大幅に向上した。過去7年間で正社員が退職したのはわずか4人。しかも、そのうち2人は大学院進学のため、もう2人は異業種の仕事に就くためだった。

 いま新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる企業にとっても、この採用面接プロセスが問題の解決策になりうると、私たちは考えている。

 世界の多くの企業は、生き延びるために支出を削減することを余儀なくされている。その一方で、消費者ニーズの変化に対応するために、社員に新しいスキルを学ばせたり、新しい社員を採用したりせざるをえない企業も少なくない。

 ところが、採用には莫大なコストがかかっているにもかかわらず、米国企業の約3社に1しか自社の採用プロセスの評価作業を行っていない。そのような状況で、私たちのアプローチを採用すれば、企業が適材適所の人材を見つけるための時間とコストを減らす効果があるかもしれない。

 そのアプローチとは、具体的にどのようなものなのか。以下で説明しよう。

パート1:質問

 まず理解しておいてほしいのは、私たちのプロセスが固定的なものではないということだ。

 私たちは、それぞれの候補者に期待するスキルを軸に面接を構成する。候補者にそのスキルを実証する機会を与えるようにしている。まったく同じ候補者は二人といないので、当然、まったく同じように進む面接は二つとない。

 面接を行う前には必ず、候補者に尋ねる問いを面接担当者同士ですり合わせる。それらの問いは、面接冒頭の対話パートで尋ねる。私たちは最初の4590分を割いて、候補者と話をする。この対話に費やす時間は、あえて厳密に決めていない。どのような方向に話が進んでもよいようにするためだ。

 私たちが候補者に投げ掛ける問いは、大きく3つのカテゴリーに分類できる。

1)候補者がどれくらい準備してきたかをテストするために、事前に調べやすいテーマについての問いを投げ掛ける。たとえば、「我が社についてどのようなことをご存じか教えてください」といった問いは、事前にグーグル検索で簡単に調べておけばすぐに答えられるはずだ。

2)批判的思考とテクノロジーに関する知識をテストするために、イエス/ノーでは答えられない問いを投げ掛けて、会話のきっかけをつくる。候補者に独創性を発揮させることが狙いだ。

 たとえば、エンジニアの面接では、ある課題(たとえば動物の写真を表示することなど)を成し遂げるアプリを、どのように開発するかを尋ねることが多い。顧客サービス部門やセールス部門の面接では、よく使っているソフトウェアを選んで、使用方法を実演させたりする。

 オフィスに招いて面接を行っていたときは、大きなモニターを使い、マウスとキーボードを操作させて、実演させていた。新型コロナウイルスの感染拡大でオフィスに候補者を招くことが難しくなってからは、ビデオ会議システムの「ズーム」で実演してもらっている。

3)人の話を聞く力とコミュニケーション能力をテストするためには、いくつかの質問を通じて指示を伝える。これにより、こちらが何を求めているかを候補者にはっきり示し、候補者がその指示に応えられるかを見るのだ。

 たとえば、有効にコミュニケーションを行えるかどうかを見たければ、「あなたの情熱の対象か、詳しく知っている物事、あるいは自分が名ばかりの専門家だと思うテーマについて説明してください。そのことについて私たちがまったく知識を持っていないという前提で話してください」などと言う。

 2つ目のカテゴリーと3つ目のカテゴリーの問いは、私たちがテーマを押しつけるのではなく、候補者がテーマを選べるようにする場合が多い。候補者が話したいと思うテーマで会話をしたいと思っているからだ。

 もし事前に準備する時間があったにもかかわらず、候補者が詳しく知らないテーマを選んだり、そのテーマについてうまく説明できなかったりした場合は、その面接や私たちの会社にあまり関心がないのだろうと判断する。

 一言で言えば、採用したいのは、先を読んでものを考えることができて、強い重圧がのしかかる局面でも真の知識と過去の経験を引き出せる人物だ。相手の聞きたいことを推測して答えるコツを持っているだけの人には興味がない。

 現在はビデオ会議システムを利用して、バーチャルにこのような面接を行っている。このやり方には利点もある。ビデオ会議システムを用いることにより、新たに必要になった別のスキルもテストできる。そのスキルとは、オンライン・コミュニケーションのスキルだ。

 ズームなどのプログラムを活用する能力があるかどうかも調べられるし、ビデオ会議での振る舞い方も見ることができる。この点は、今後きわめて重要なスキルになるだろう。私たちのチームのメンバーは当分の間、売り込み先や顧客、同僚とビデオ会議で話すことになるからだ。

パート2:テクノロジーに関するスキル

 対話パートのあとは、やはり4590分くらいかけて、候補者と、その人物の専門分野のエキスパートであるチームメンバーが話をする。それに続いて、コラボレーションのスキルを試すための短いエクササイズを行わせる。

 このときチームメンバーは、採用後に携わることになる職務に関連した質問をする場合が多い。候補者がその仕事に本当に興味を持っているかを判断するためだ。顧客サービスの職では、人を助けることにやり甲斐を感じるか、電話で話すことが好きかといったことを尋ねる。

 状況によっては、候補者が何に関心を持っていて、どのような仕事に最もやり甲斐を感じるかなど、もっと間接的で一般的なことも尋ねる。愛情を持てる仕事に携わっている社員は、長く会社にとどまる傾向があるとわかっているからだ。

 エクササイズでは、候補者が実際にどのようにスキルを活用し、同僚とどのくらいコラボレーションができるかを見るための有効な設定を用意する。この活動は、特定のチームで仕事をするのがどのような経験かを知る機会にもなる。

 たとえば、エンジニア職の採用候補者には、ペア・プログラミングを行わせたりする。2人にペアを組ませて、問題解決に取り組ませるエクササイズだ。エンジニア職の採用でこの方法を採用している企業は珍しくないが、私たちは同様のチームエクササイズをあらゆる役職の採用面接で実践している。

 対話パートと同様、このパートでも、どのようなテーマを取り上げるかを事前に候補者に教えている。それにより、候補者が前もって準備してくるように義務づけることができる。

 画面共有などの機能を備えたビデオ会議システムや、プログラミングのリモート面接用に開発されたコードバンク(CodeBunk)などのツールは、この種の面接をバーチャルに行うために役立つだろう。

パート3:文章のサンプル

 最初の面接の前後に、候補者に文章を書かせている企業は多い。しかし、この要素はもっとしっかり実行したほうがよい。適切に行えば、候補者が誰の手も借りずにどの程度の文章を書けるかがわかるからだ。

 私たちは採用する全社員に対して、大掛かりな編集作業なしで、場合によっては厳しい時間的制約の下で明晰な文章を書けることを求めている。バーチャル面接の場合、候補者が独力で執筆した確証は得られないが、私たちの手法を用いれば、候補者の文章力とコミュニケーションスキルをおおよそ把握できる。

 どのような課題を与えるかは、職種によって決まる。たとえば、顧客サービス部門であれば、腹を立てている顧客(架空の人物)からのメールと、私たちの会社の対外的なメッセージとして理想的と見なせるメールのサンプルを示す。そのうえで、サンプルを真似して、腹を立てている顧客への返信を書くよう指示する。

 返信を書く前に、可能な限りたくさん質問して、メモを取ってほしいと思っている。このとき、返信文の分量を具体的に指定することはしないが、サンプルが参考になるはずだ。

 オフィスで面接を行う場合は、静かな部屋で3045分与えて、返信を書き上げさせることが多い。バーチャル面接の場合は、ビデオ会議での会話を3045分中断して返信を書かせる。そのあと、オンラインでの面接を再開し、文面を検討しながら、特定の言葉や文章構造を用いた理由を尋ねる。

 私たちは提出された文章をもとに、候補者が批判的思考を実践して文章の構成とメッセージのトーンを考えられるか、全般的に思慮深い文章が書けるかを見ている。

パート4:ゲーム

 私たちは、候補者が未来の同僚たちと普段どのように接するかも知りたい。しかし、面接で「同僚はあなたのことをどのように評価していますか」「チームではどのような役割を果たすことが多いですか」といった質問を投げ掛けて、それに対する返答をもとに推測したりはしない。候補者の実際の行動を観察するのが私たちのやり方だ。

 オフィスに候補者を招いて面接を行うときは、ボードゲームをプレーさせて、ほかのプレーヤーとのやり取りを観察する。ここでは、ゼロ・サムの状況でプレーヤー同士を競わせるタイプのゲームではなく、プレーヤーが力を合わせて一つの目標を追求するタイプのゲームを用いる。

 バーチャルで面接を行うときは、コードネーム(Codenamesのように、リモート環境でプレーしやすく、しかもコラボレーションの要素があるゲームをプレーさせる。

 目的は2つだ。1つは、候補者がチームメンバーとどのようにやり取りするかを見ること。もう1つは、私たちの会社が楽しい職場であると示すことだ。

 面接の過程で候補者は多くの社員と接するが、社員の中には自分の経歴や関心事を候補者に語らない人も多い。そこで、面接のこのパートでは、候補者と共通点が多くありそうな社員が参加するようにしている。

 たしかに、候補者が多様な社員と接することは、いまのような時期には特に重要だ。しかし、面接を受ける候補者たちには、居心地よく、打ち解けた雰囲気を味わい、自分がチームに受け入れられていると感じてほしい。

 たとえば、チームメンバーが全員45歳以上で、大学を卒業したばかりの人を面接するとすれば、かならずしも社内を探して最年少の人物を連れてくることはしない。年齢に関係なく、チーム内で最も社歴が浅く、経験の乏しいメンバーを加える場合もある。そうすることで、候補者が居心地よく感じ、経験豊富な社員の前で委縮しないようにするのが狙いだ。

 このパートで行うゲームの結果そのものは、重要ではない。目的はあくまでも、34時間のプロセスを通じて私たちの企業文化との相性がよいかどうかを見極めることだ。

 具体的には、思慮深さ、強いエンゲージメント、好奇心、そして、そのときやっていることを楽しむために(たとえ演技でも)目に見える努力をする姿勢を兼ね備えた人物を採用したい。これらの資質は、特定の職種で採用する人にだけ求めるものではない。これらは、会社全体で重要視している資質だ。

効果を定量評価する

 以上の4つの活動を実践するためには、たびたびそれを繰り返し、実験を重ねる必要がある。採用活動が一通り終わるたびに、いくつかの基準に照らして、面接方法の有効性について評価作業を行う。

 一つの基準は、どれくらいの頻度で、それぞれの活動により私たちの決定が左右されたかという点だ。つまり、これらのステップに従って面接を行うことで、より自信を持って判断できたかを問う。もしそうであれば、その面接方法が有効な証拠と見なせばよい。逆に、そうでなければ、どの点がうまくいっておらず、その問題を修正するためにどうすればよいのかを検討すべきだ。

 もっとも、面接方法の有効性を評価するうえで最も重んじている要素は、採用した人物の質だ。

 私たちは数年前、仕事の能力は完璧だけれど、仕事に関心を持っていないインターンを大勢採用していることに気づいた。採用活動の質を改善しなくてはならないと、私たちは思った。一部のインターンが実習終了時の面談で、私たちの会社での実習を次のステップへの踏み台と位置づけていたと語り、正社員採用の誘いを断ったのだ。

 そこで、テクノロジー面の資質を見るパートで、もっと業務に直結した質問をするようにした。そうすると、採用した人たちの定着率が上昇し始めた。

 面接が終わったあとに候補者に評価を下すプロセスも、修正する必要があった。最初の頃は、面接の日の間ずっと(本人のいない場所で)候補者のことを話題にし、互いの印象を論じ合っていた。しかし、このやり方だと、バイアスの影響を受けやすいなど、さまざまな問題が生じる恐れがあると気づいた。

 そこで、面接がすべて終わるまでは、誰とも候補者について話してはならないことにした。面接が終わると、面接に参加したメンバー全員がアンケートに記入する。候補者に関して評価を下したい、さまざまなテーマについて問うアンケートだ。全員の記入が終わってはじめて、話し合いを始める。

 リーダーは、採用が完全無欠のサイエンス足りえないと考えて、それを言い訳にして、これまで何十年も用いられてきた時代遅れの面接プロセスをそのまま続けたくなるのかもしれない。しかし、今日の経済環境で、採用に失敗するリスクを冒す余裕がある企業はほとんどないはずだ。

 私たちは、候補者のスキル、適性、企業文化との相性を明晰に把握できる面接プロセスを設計することは可能だと考えている。本稿で紹介したやり方は、その参考になるだろう。

HBR.org原文:How to Design a Better Hiring Process, June 26, 2020.