天牛(紙切り虫)

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2019年10月

台風19号情報でも存在感


ダイヤモンドオンライン(
中島 恵:フリージャーナリスト)

2019.10.29

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A

2018年に東京マラソンの応援で集まったときの写真(写真提供:呉洲氏)


中国の存在感に比例するように、在日中国人の存在感も高まっている。彼らは中国発のSNS、ウィーチャットを駆使してさまざまな活動や交流を行っているが、その実態は日本人にはほとんど伝わってきていない。日本に住む彼らは、一体どんな情報を共有したり、発信したりしているのだろうか。日本最大級の在日中国人コミュニティーの代表に話を聞いた。(ジャーナリスト 中島
恵)

日本に住む中国人の約7分の1以上が参加

「イベントは大小合わせて年間6070回くらい行っています。料理会、ハイキング、お花見、小旅行などのほか、中国関係のイベントにも参加。小さいイベントは3040人、大きいイベントは100人単位で開催しています。9月には東京・代々木公園で、中国駐日本国大使館などが主催する大規模な『チャイナフェスティバル2019』が開催されたのですが、それにも参加しました。活動をやりやすくするため、20181月には一般社団法人となり、日本の組織や団体との交流も行っています」

 こう語るのは一般社団法人「華人時代」会長の呉洲氏(37歳)だ。呉氏は吉林省出身。中国の大学で出会った日本語教師の影響を受けて日本に興味を持ち、来日して筑波大学大学院で学んだ。現在はIT関係の仕事をしているが、そのかたわらで中国人同士の集まりを主催するようになった。

「今、日本には大勢の中国人が住んでいますが、日本にいるのに、なかなか日本人の友だちができなかったり、中国人の友だちも皆忙しくて会う機会がなかったりと、さみしいと思っている人がけっこう多いと思います。また、日本についての情報にも偏りや誤解があったりします。そこで小さな集まりを企画するようになり、それが次第に大きくなっていきました」(呉氏)

「華人時代」の会員数は約98000人に上る。日本に住む中国人は約76万人(2018年末、総務省の統計)いるので、実にその約7分の1以上の人が参加しているという計算だ。つまり、「華人時代」は日本最大規模の中国人コミュニティだといえる。

 会員の大半は中国人だが、中国語がわかる在日マレーシア人やシンガポール人、中国に関心が高い日本人もいる。東京だけでなく大阪や九州にも会員がいて、年齢は10代後半から40代が中心だ。留学生やビジネスパーソン、企業経営者など職業は多岐にわたっている。拙著『日本の中国人社会』でも取り上げたが、日本政府のデータによると、在日中国人は2030代が中心で、全体の60%を占める。やや女性が多いという傾向があるが、「華人時代」の会員の特徴もそれとほぼ合致している。「華人時代」という名称は、読みやすい4文字で、広い意味での華人と、自分たちの時代という意味を込めて名づけたという。

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毎月行っている料理会で作った中国料理


 運営している主要メンバーは約100人。会長の呉氏をはじめ、企業経営者、在日中国系企業の社員、日本企業の社員などがいる。何かあるごとに不定期に集まり、今後の方針や活動計画を話し合っているという。

 企画しているのは、料理会などのイベントや交流会、日中のメディア情報の提供、ビザや在留資格に関する情報や相談、アルバイト、就職、ビジネス、医療、不動産に関する情報など。外部組織や日本企業との連携もあるが、社団法人でもあり、活動は利益が発生しないものだ。会員の中には行政書士や人事・法務に詳しい専門家もおり、会員同士、互いに相談に乗っているという。

台風19号では日本語を翻訳してSNSで発信

 情報の発信はすべてSNSだ。ウィーチャットの公式アカウント(公衆号[ゴンジョンハオ])を持ち、そこに中国の情報や、日本語メディアからの翻訳情報を日々発信している。また、ウィーチャット内のグループ(朋友圏)、ウェイボー、フェイスブック、ツイッターなどでも情報を発信したり、相互にシェアしたりしている。「華人時代」から派生したグループは50にも上る。ウェイボーのフォロワーは約12万人。多くの日本人もアクセスしやすいよう、11月末までに公式ホームページも開設する予定だ。

私がこの組織の存在を知ったのも、10月中旬に関東地方を襲った台風19号のときに流れてきた記事がきっかけだった。ウィーチャットを見ていたところ、中国人の友人のひとりが「超級台風互助群」というグループの情報をシェアしていたのをたまたま目にしたのだ。

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                    台風19号のときには日本のメディア情報を中国語で拡散した


 過去最大級といわれる猛烈な台風の最中、日本に住む外国人に適切な情報が届いているのかどうか心配されたが、日本人のSNSと同様、在日中国人のウィーチャットでも台風の進路情報や危険地域、注意事項などが多数シェアされていた。その1つがこちらの画像で、中国語で詳細な情報がひとまとめになっていた。

「台風の最中、一人暮らしで心細かったり、日本語が得意ではなかったりする中国人が困っているのではないかと思い立ち、台風が関東を直撃する前日のお昼ごろに急きょ新しいグループを作成しました」(呉氏)

「(10月)11日に立ち上げましたが、台風が迫ってきた12日のお昼ごろになると、メンバーが約3000人にまで膨れ上がったので、日本語の台風情報を翻訳してSNSに流しました。その情報があちこちに拡散されたことで、より多くの在日中国人の役に立てたようです」(呉氏)

「超級台風互助群」の記事にはコメントがつけられるようになっているが、私が見た記事の読者数は約6000人で、コメント欄には「日本の無事を祈る!」「食料と水を確保しましょう」「困ったときには日本の警察を頼りましょう」などと書かれていた。

 在日中国人の中には、中国に住む家族からの問い合わせや心配の声も多数届いたが、そんなときにも、同グループの情報があることで心強く、状況が的確に判断できたようだ。むろん、日本人の配偶者がいたり、日本のテレビやネットから直接情報を得ていた人も多かったと思うが、中国人同士のコミュニティーからの情報も得ることで、より安心感が増したといえる。

「日本とのつながり」をもっと重視していきたい

 こうした活動を行う一方で、彼らは今後、「日本とのつながり」をもっと重視していきたいと話す。社団法人化したこともあり、以前から日中友好団体などとの交流の機会も持っているが、台風19号の被災者に対して何かできないかと思い、募金活動を開始した。

「中国人が多い東京・池袋や埼玉県川口市の中華料理店に募金箱を置かせてもらったり、グループチャットなどでも募金を呼び掛けたりしており、募金のための専用口座も設けました。また、『華人時代』として長野市に義援金を送金することになりました」(会員の佐藤雅之氏)。

 中国の老舗の中国料理店であり、東京・池袋に支店がある「東来順」とも協力し、「華人時代」に一定の義援金を出した人は、同店で使えるクーポンを発行するという新しい試みも行った。呉氏によると、在日中国系企業も何か日本で社会貢献を行いたいという意思があり、目的が一致したという。

「在日中国人の多くは日本が好きで日本にやってきて、日本に愛着の気持ちを持っています。だから、中国人だけで集まるのではなく、もっと日本人と交流したり、日本社会に貢献したいと思っています。台風の被害は残念な出来事でしたが、こうしたことをきっかけに、在日中国人がもっと日本社会を理解できればいいし、お互いにもっと協力し合えることがあればいいと思います」と呉氏は話す。

 私は以前、中国や日本に住む中国人の有志が熊本の大震災の際に寄付したことをこちらの記事(ダイヤモンド・オンライン「熊本地震に中国人の反応がかつてなく同情的な理由」)で紹介したことがあったが、あれから3年がたち、日本の中にはさらに数多くの中国人コミュニティーが出来上がり、それぞれがネットでつながり、その年齢層、職業はますます多様化してきている。

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料理会は会員にとって楽しみなイベントのひとつ


日本人が気づかないうちに大きな変貌を遂げている在日中国人社会――。その人口は、冒頭で記したように約76万人に達し、一都道府県と同じだけの規模になっており、日本社会にもさまざまな方面で影響を与え始めている。

 一定以上の年齢の日本人が思い浮かべる“中国人像”は今もステレオタイプのままで昔とあまり変わらないが、現実はすでに様変わりしている。2030代の若い世代を中心に、日本社会に溶け込もうとする中国の若者世代がこれほど能動的に動き、日本に熱い関心を寄せているのだ。

 

MONEY VOICE(鈴木傾城)

2018920

 

少子高齢化の問題を真剣に考えている人は少ない。日本人の半数が大都市圏に住んでいるため、その深刻さを理解できないのだ。日本をあきらめた地方の悲惨な現状を知っても、まだ見て見ぬふりを続けられるだろうか。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』鈴木傾城)

 

都会の人は気づかない。急増する買い物弱者、団塊世代の認知症

日本を終わらせる「超少子高齢化」

2018916日、総務省は「日本の総人口に占める70歳以上の割合が2,618万人となり、初めて日本の人口の2割を超えた」と報告している。団塊の世代が70代に達しているのだ。65歳以上で見ると3,557万人で、日本の総人口比の28.1%である。

 

一方で出生数の方は、200万人超えだった1974年以後から明確に減少の方向にあり、2016年にはとうとう100万人を割って976,978になってしまっている。

 

高齢者が極端に増え、子供が極端に減っている。まさに、超少子高齢化が進んでいる。また、人口の自然増減率を見ると2007年から一貫してマイナスを記録するようになった。

 

これらのデータから、日本は3つの危険な事態が進行しているということが分かる。

1.       高齢者が増え続けている
2.
子供が減り続けている
3.
人口も減り続けている

高齢者が増えて、子供が減って、人口も消えていく。日本が静かな危機に直面している。

高齢者が増え続ける国にイノベーションは生まれない。子供が減り続ける国に活力は生まれない。人口が減り続ける国に成長は見込めない

 

少子高齢化は日本を崩壊させる致命的な病苦なのだ。そろそろ日本人は、これから生々しい「日本の崩壊」を現実に見ることになる。

日本人のほとんどは少子高齢化という病魔に無関心

社会・文化・経済における「日本の崩壊」があるとしたら、その原因となる確率が最も高いのは、間違いなく少子高齢化の進行だ。

 

しかし、日本人のほとんどは少子高齢化という日本を蝕む病魔に無関心だ。まるで他人事なのだ。なぜなのだろうか。それは、半分以上の日本人が「少子高齢化をまったく実感できていない」ことにある。

なぜ実感できないのか。それは、日本人の人口の半分が三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)に暮らしており、この三大都市圏に暮らす人たちは「日本人が減っている」ということに肌で気づかないからでもある。

 

総務省統計局「国勢調査」及び国土交通省「国土の長期展望」がまとめた資料を元に、総務省市町村課が作成した『都市部への人口集中、大都市等の増加について』の資料を読むと、この三大都市圏に住む人たちの割合はさらに増えていき、都市部の人口集中がこれからも続くことが示されている。

 

一方で、三大都市圏以外の地域は着実に人口減となる。2050年までに、現在、人が居住している地域の約2割が無居住化し、国土の約6割は無人化すると分析されている。

 

人口の半分以上は三大都市圏に暮らすので、少子高齢化はまったく実感できていないのである。だから、地方がどんどん死んでいくのに無関心のまま放置されている。

日本崩壊の過程が人口動態から透けて見える

この現象を見ると、日本の崩壊はどのように始まるのかは明確に見えてくるはずだ。

都会に住む日本人が無関心のまま最初に地方が死んでいき、やがて都市部もまた少子高齢化に飲まれて崩壊する

 

これが、人口動態から見た日本の崩壊の姿である。少子高齢化という病魔は、「地方」という最も弱いところを破壊して壊死させてから、都市部に侵食していくのだ。

 

増え続ける「買い物弱者」

最近、地方で買い物ができずに孤立する「買い物弱者」の問題が表面化しつつある。

地方は人口が少ないので、そこでビジネスをしても割が合わない。だから地方に進出するビジネスは少ないし、逆に地方のビジネスはチャンスを求めて都会に向かう

 

仕事が消えれば、若者も消える。地方に残されるのは常に高齢層である。高齢層は消費が弱い。だから地方の個人商店は売上が上がらず、店主の高齢化も相まって次々と廃業を余儀なくされていく。

地方で暮らすというのは、不便と隣合わせである。都会ではどこにでもあるファストフード店やコンビニも採算が合わないので進出しない。

そこに今まであった個人商店さえも消えていくのだから、地方ではモノを買いたくても買えない人たちが大量に出現しているのである。

地方は、もはや買い物すらできない陸の孤島に

2015年の経済産業省調査では、こうした60歳以上の買い物弱者数は700万人いると試算している。

若年層であれば、こうした環境であっても「インターネットで買い物すればいい」と考える。しかし、高齢者はそんなわけにいかない

 

高齢層は年齢層が高くなればなるほどテクノロジーから疎くなり、インターネットの基本さえ分からない。

それだけではない。人口が減り、出歩く高齢者も減っていくと、交通機関も赤字経営となって維持できない。電車は走らなくなり、バスの路線もなくなり、交通はいよいよ不便になる

銀行も、病院も、郵便局も、赤字経営になれば撤退していくしかない。当然のことながらATMもない。

そうなれば、地方は陸の孤島も同然の状態となり、いくら郷土愛が強くても、そこで暮らしていけなくなってしまう。こうした状況が延々と続いており、少子高齢化によって状況は悪化するばかりだ。

 

自然災害からのインフラ復旧すら危うい

ファストフード店もない、コンビニもない、個人商店もない、交通機関もない、銀行もない、病院もない、郵便局もない。少子高齢化はそうやって地方を「壊死」させてしまう。

人口が減り、高齢化し、やがて消えていくのだから、地方が再生できると思う方がどうかしている

昨今は地震やゲリラ豪雨や台風と言った自然災害も大型化しているが、地方がこうした自然災害に被災していくと、やがてはインフラの復旧ができなくなる可能性も高い。

インフラが消えれば生活環境は極度に悪化する。地方は再生よりも荒廃に向かう

見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図

2018年、「70歳以上の割合が2,618万人となった」と総務省は発表したというのは冒頭でも書いたが、気がかりなのは2024年には日本で最も人口の多い団塊の世代がすべて「75歳以上」となってしまうことだ。

 

認知症は75歳を過ぎると急激に増えていく。2024年から認知症は大きな社会問題として見えるようになっていく。2026年には高齢者の5人に1人が認知症患者となる。これは患者数にすると約730万人である。

 

日本の地方は病院も介護施設もなくなっている。だとすれば、あと10年もしないうちに、見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図が発生したとしてもおかしくない。実際、そうなると危惧する人もいる。

地方の人々は日本をあきらめた

少子高齢化に叩きのめされ、地方は疲弊し、荒廃し、そして見捨てられた。そして、地方の人々はもうこの状況が改善できないことを悟り、再生をあきらめ、日本をあきらめた。

しかし、都会に住む日本人はまったくそのことに気づいていないか、気づいても無関心のままである。これで日本はこれからも大国でいられると楽観的に思える人はどうかしている。

日本を愛し、日本の未来を憂うのであれば、日本最大の国難は少子高齢化であると強く認識しなければならない。もう手遅れの一歩手前まで来ている。

 

危機感が共有できていないうちは何も始まらない

少子高齢化が日本を破壊する時限爆弾になっているという意識は、まだ日本人全体に共有されていない。そして、危機感もまた希薄だ。

 

すでに少子高齢化が地方をじわじわと殺している現状にあっても、国民の半数は三大都市圏に住んでいるので、まるで他人事のように「見て見ぬふり」をしている。

しかし、少子高齢化によって税収が減っている上に、高齢者にかける社会保障費が膨れ上がっている。

少子高齢化の放置によるツケは、年金受給年齢の引き上げ、年金の削減、医療費負担の増大、税金の引き上げ……という見える形で、日本人全員にのしかかってくるようになっている。

人口動態から見ると、少子高齢化問題は解決するどころかより深刻化してしまうわけで、もう日本人はこの問題を無視できないところにまできていることを認識すべきなのだ。

自滅へのトロッコに乗った私たちにできること

最初にやらなければならないのは、とにかく「少子高齢化が日本を自滅させる」という共通認識を持ち、これを広く周知して国民の意識と議論を高めていくことだ。

 

危機感が共有できていないから問題は先送りされてきた。ここで少子高齢化の危機感が共有できなければ、日本は破滅的な結末を迎えてしまう。

この危機感が共有できたら、出生率を上げるためにどうするのか地方をどう救うのか、少子高齢化を解決するために税金はどのように配ればいいのか、政治家は何をすべきなのか、社会はどのように変わるべきなのか、すべての議論が進んでいくことになる。

 

危機感が共有できていないうちは何も始まらない。だから、「少子高齢化による日本の崩壊」という未来が見えた人は、まず最初に日本を救うために「大変なことが起きている」と叫ぶ必要がある。もう時間がない。

プロフィール:

鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。

191028 留学生向けの就職ガイド
                   *図・表は、クリックで拡大

Newsweek(片山ゆき ニッセイ基礎研究所)

20191024

 

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農村では、世帯扶養を中心に地域で支える介護モデル(2017年、上海近郊の農村でテレビを見る女性たち) David Stanway-REUTERS

 

<来年、介護保険制度が本格始動する中国。ハイテク介護の準備を進める都市部に対し、財源の行きわたらない農村部はいかに高齢化を生き残ろうとしているのか>

少子高齢化が急速に進む中国。来年の介護保険制度の本格始動を前に、都市部では、デイサービスやショートステイ、訪問介護などの介護サービスを提供する小規模多機能型施設や老人ホーム、高齢者マンションなど次々にオープンしている。加えて社会のデジタル化の進展とともに、介護のIoT化も進められつつある。例えば、最近オープンした上海市内のデイケアセンターを訪問すると、センサー付きの介護ベットを導入し、介護職員のタブレットや家族のスマホで、高齢者の健康状態が瞬時に確認できるという。人材不足の緩和、作業の効率化をはかり、介護サービスのデジタル管理にも一役買っている。ハード面だけを見ると、日本よりも進んでいるのではないかと思うほどだ。

翻って、農村部はどうか。農村部の問題として、こどもが都市部に働きに行ってしまい、高齢の夫婦のみまたはその孫(未成年)が農村で残され生活をする"空巣問題"が代表的である。介護の担い手がいない上、都市部にあるようなデイケアセンター、老人ホームがあるわけでもない。高齢者は見捨てられ、孤立し、、、という報道もよく見かける。確かにそういった問題もある。都市と農村の格差を声高に非難することは簡単であろう。しかし、現地で限られた予算内で、試行錯誤しながら行われている取組みは極めて現実的である。

筆者は6月に上海市郊外の農村部でのある取組みを見る機会を得た。ビル群の上海市内からバスで向かったが、降り立った瞬間、土のにおいがした。目の前には畑が広がっている。上海市郊外で実施されていたのは、空き家を活用した"高齢者向けのカフェ"の開設である(写真参照)*

イメージとしては、高齢者が集まる"集会所"が近いかもしれない。この高齢者カフェでは、まず、一番の問題とされる食事(昼食)を解決している。また、食事の提供以外にも、健康講座や困りごとの相談、レクリエーションと大きく分けて4つの内容について実施している。訪問した際は、軒先で集まった高齢者が楽しそうに、懐かしい歌を歌っていた。

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運営はNPOが行っているが、日々の食事の準備などには住民もボランティアで深く関わり、地域の結びつきの強さが感じられた。地域内で、前期高齢者が後期高齢者を支えている形だ。

*例えば日本では、高齢者の外出支援と認知症予防ケアを目的とした「オレンジ・カフェ」の取組みなどがある。

なお、空き家をもとの家主から借り受け、リノベーションする費用は、主務官庁である民生局から5万元(80万円)が支給される。加えて、施設の1年間の運営費として更に5万元が支給されるとのことである。農村部での老後の生活は世帯扶養を中心とし、それを村や村民による住民委員会などの組織が支えている。都市化が進んだ地域では都市部と同様の介護保険制度を導入しているが、財源の関係上、まだ限定的なのが現状だ。

このように、空き家をリフォームし、小さな拠点を網目状に展開していくという取組みは、今回訪れた上海市郊外の区内320ヶ所で実施され、今後、500ヶ所まで増えれば、区全域をカバーできるという。一見すると、冒頭の上海市内の状況と大きく異なるため、その違いに目が行きがちである。しかし、当の高齢者は、長年住み慣れた地域で、顔見知りの人と一緒に老後を過ごしたいという思いが強く、都市部の施設への入居はしたがらないという。

そこに住む高齢者の希望に応じた老後の生活のあり方を模索し、地域の住民を巻き込み、小さなコスト・横展開でネットワークを形成していく。このような取組はあくまで老後問題解決に向けた一歩であり、まだ課題はたくさんあるが、農村が抱える現実や実情に則した取組みとして全国的にも注目されているようだ。

訪問した際に、ボランティアで来ているという住民が厨房で作った素朴なパンを振舞ってくれた。何とも言えない心温まる味わいと、屈託のない笑顔が印象的であった。

片山ゆき
ニッセイ基礎研究所

保険研究部准主任研究員・
ヘルスケアリサーチセンター兼任

 

130412 「マンチュリアン・リポート」
                  *図・表は、クリックで拡大

(作品紹介)
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