日本経済新聞 電子版

2019/5/3

 次世代通信規格「5G」に関する特許出願数で中国が34%と、現行の4G1.5倍以上のシェアを握ることがわかった。4Gでは欧米が製品の製造に欠かせない標準必須特許SEP)を握ったが、次世代産業のインフラとして注目される5Gでは中国が存在感を増す。特許数は自動運転など各国の新産業の育成や次世代の国力をも左右する。

図1

 

SEPは事業を進める上で代替の効かない技術の特許で、現在の4Gのスマートフォン(スマホ)では出荷価格のおよそ2%が特許使用料だという。国内の知財関係者によるとその総額は年間1兆円以上にのぼるといい、特許を押さえた企業が主力プレーヤーになる。

独特許データベース会社のIPリティックスによると、3月時点の5G通信で必須となるSEPの出願数で中国は34.02%のシェアを持つ。

出願件数が最も多い企業は華為技術(ファーウェイ)で、シェアは15.05%だった。中国勢は5位に中興通訊(ZTE)が、中国電信科学技術研究院(CATT)が9位に入った。

通信技術で先行した米欧は3G4Gで主力特許を保有した。そのため中国などは欧米のライバル企業に多くの特許利用料を支払わねばならなかった。

そこで中国は次世代情報技術を産業政策「中国製造2025」の重点項目に位置付け、国を挙げて5G関連技術の研究開発を後押ししてきた。ファーウェイの5Gを含む研究開発費は年間100億ドル(約11100億円)以上とされる。

図2

 

ファーウェイは基地局の開発などにかかわる特許の申請が多いとみられる。スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアをしのぐ。ZTEも基地局などでシェアを伸ばしている。韓国はシェア3位のサムスン電子と4位のLG電子がけん引し、全体で25.23%4Gから2ポイント以上シェアを高めた。

一方、米国は14%4Gに比べてシェアを2ポイント下げた。スマホの半導体などの特許を持ち、4Gの主力プレーヤーである米クアルコムも5Gではわずかにシェアを下げ、6位になっている。

ただ、通信の場合、技術の特許は積み重ねであり、5Gになっても3G4Gの特許が引き続き使われる。クアルコムの優位性が一気に失われるとは考えにくい。同社の1913月期の知財ライセンス部門の売上高は112200万ドルにのぼる。日本も5%と約4ポイントシェアを下げている。企業別シェアで12位の富士通は「狙った場所に電波を飛ばす技術など5G関連で様々な特許を持つ」という。

SEPを持つ企業は特許収入で潤い、5G対応の基地局やスマホといった新たな設備を提供する際の価格競争力を高められる。一般的にSEPを多く持つ企業を抱える国ほど5Gインフラを安価に広げられ、次世代サービスで主導権を握りやすくなる。出願数に加え、使われる頻度の高い重要な特許を握れるかどうかも大きい。

米国は安全保障上の理由で5Gに関してファーウェイなど5社からの政府調達を禁じる方針だ。しかし同社は5G製品の開発に欠かせない多くの特許を押さえており「ファーウェイは米国で製品を売ることができなくても特許利用料は獲得できる」(IPリティックスのティム・ポールマン最高経営責任者=CEO)。

莫大な開発費と長期的なプランのもと、5Gの技術開発で中国は通信の世界で存在感を増している。その基盤の上で展開する各種サービスでも中国が米国をしのぐ存在になる可能性がある。